研究課題/領域番号 |
24592656
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
富田 剛司 東邦大学, 医学部, 教授 (30172191)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 眼血流動態 |
研究概要 |
本研究の目標は、緑内障における網膜、視神経乳頭の構造変化と視機能障害との関連を解明し、現在は眼圧と視野測定による経過観察が主体である緑内障治療評価を、構造変化の評価とより客観性のある視機能評価法を主体としたものに変換することをめざすものである。 その目標の第1歩として、スペクトラルドメイン光干渉断層計(SD-OCT)で測定されたベースライン時の乳頭周囲網膜神経線維層(RNFL)厚および黄斑部網膜神経節細胞複合体(GCC)厚が原発開放隅角緑内障(POAG)の視野進行の予測因子になるか、35例35眼を対象に検討した。2年以上の経過観察で5回以上測定されたハンフリー視野障害指数のMDスロープが-0.4dB/年を越えるものを視野障害進行とすると、7眼が視野進行と判定された。視野非進行と判定された残り28眼と比較すると、経過観察開始時の下方NFL厚の平均値、下方GCC厚の平均値は、進行眼では、非進行眼と比較して有意に薄かった。従って、ベースライン時の下方のRNFL厚およびGCC厚が薄いものは視野進行が早い可能性が示された。このことにより、緑内障治療開始時の構造変化に注目することにより、将来の予後予測が可能であり、治療方針を立案する上で、重要なデーターが提供されることが判明した。 一方、緑内障の手術治療前後で、乳頭構造と網膜構造がどのような変化を生じるか、検討した。その結果、術前後で平均眼圧が21.3±10.1から12.9±2.3mmHgに変化したの伴い、術後測定時点で眼圧下降率が20%以上であった8眼に限ってみると陥凹パラメーターに有意な変化はみられなかったが、RNFL厚では、術後に有意な増加がみられた。このことは、緑内障治療により眼底構造は変化しうることを示し、緑内障の治療効果を評価する上で、構造変化と視機能変化との関連を詳細に解析することの重要性があらためて判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の大きな目的は、緑内障の診断・経過観察に、黄斑部網膜神経節細胞複合体厚(網膜内層部分)の評価が重要であることを証明し、黄斑ERGや眼底血流変化等、視野に変わる客観的視機能評価法を確立し、それとGCC厚の関連を解明することである。その第一歩として、経過観察開始時のベースラインGCC厚が、その後の視野進行の予後予測に非常に重要な意味を持つことが判明した。また、視野障害、NFL厚、GCC厚と乳頭部血流との関連および緑内障治療薬の効果を解明するべく、施設IRBの承認も得られ、順調に症例数を伸ばしており、研究開始1年目の状況としては、概ね順調な研究ペースであると自己点検する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、黄斑部網膜内層構造と視野を中心とする機能変化との関連を解析し、黄斑部網膜内層の構造変化が緑内障の予後予測に有用である可能性が示された。今後、さらに緑内障における構造と機能との関連を解明するべく、視神経乳頭部の組織血流変化と黄斑部局所網膜電図(ERG)変化と構造変化との関連を本格的に進めていく。そのために、原発解放隅角緑内障(POAG)の治療前患者を中心として、光干渉断層計(OCT)検査と従来の視野検査に加えて、レーザースペックル法による眼底組織血流評価(現有備品)と、黄斑局所ERG測定を行い、緑内障治療前と治療開始後の各種評価パラメーターの経時的変化を今後最低2年間を最終目標として継続していく。また、治療開始半年後、1年後での途中経過を評価し、構造変化、視野変化、血流変化、ERG変化の4パラメーターの関連を綿密に解析していく。未治療のPOAG新患者は、当施設では月10名前後であり、今後最低年50名を目標として、研究対象者として登録していく。構造、視野、血流研究におけるIRB承認すでに取得している。今後は、黄斑局所ERGにとの関連の解明についても、IRB取得を行い、対象者登録をすすめていく。 動物実験については、実験的高眼圧モデルに対する眼圧下降治療による構造変化の確認と、特に黄斑局所ERGとの関連につき、その実験系の確立をめざしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究の遂行にあたっては、検査に使用する薬品、器具、実験動物の購入費用などの、消耗品の補充が不可欠であり、また、今後、論文作成に伴う、英語論文校正費用、論文や引用文献の確認にともなう論文のコピー用紙とコピー費用が必要となる。
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