研究実績の概要 |
加齢黄斑変性関連遺伝子座として、染色体10q26の領域に位置する最もp値の低いHtrA1とARMS2の感受性遺伝子が注目されている。本研究ではCAGプロモーターを用いてHtrA1およびARMS2、ARMS2 (A69S)を全身発現するトランスジェニックマウスを作製し、生後1年のHtrA1 Tgマウスでは蛍光眼底造影+光干渉断層像(Spectralis HRA+OCT, Hiedelberg Engineering)を観察した結果、約18.2%の個体で今まで報告されていない放射状の脈絡膜新生血管が観察された。さらにEVG染色によりHtrA1 Tgマウスではブルッフ膜の断裂および消失が観察された。一方、ARMS2、ARMS2 (A69S) Tgマウスにおいではいずれも網膜の異常が認められなかった。また、環境因子の一つである喫煙による影響を調べるために、タバコ主流煙発生装置を用いて喫煙暴露3か月後、生後1年のWtマウスのうち約7.7%、HtrA1 Tgマウスのうち約20.0%の個体で新生血管が観察された。さらに、HtrA1 Tgマウスの中には網膜下における組成不明の蓄積が観察された。これらの結果は、HTRA1タンパク質の過剰発現はブルッフ膜の脆弱性を惹起し、日本人で多く見られる滲出型加齢黄斑変性との強い相関が示唆された。喫煙は遺伝因子と相互作用し加齢黄斑変性の発症リスクを高めていると考えられる。滲出型加齢黄斑変性は根本的な治療法は確立されていないのが現状であり、何よりも予防は大切なこととなる。我々の研究成果は疾患の早期発現、環境因子を取り除くことによって加齢黄斑変性を予防あるいは遅延させることとHTRA1抑制に向ける治療及び新薬の開発が期待される。
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