研究課題/領域番号 |
24592668
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
大路 正人 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (90252650)
|
研究分担者 |
柿木 雅志 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (80531516)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | VEGF / ペガプタニブ / カニクイザル / アイソフォーム |
研究概要 |
血管内皮増殖因子(VEGF)にはVEGF165, VEGF121などのいくつかのアイソフォームが認められているが、これらはいずれも血管新生を促進する。近年、末端の配列の異なるアイソフォームが発見されVEGFxxxbをよばれ、これらは新生血管を抑制する作用がある。われわれは以前に加齢黄斑変性の治療薬として認可されているVEGF165の阻害剤であるペガプタニブの硝子体内投与後に眼内VEGFがパラドキシカルに増加することを報告した。 今回の研究では硝子体内に投与されたペガプタニブが眼内VEGFに与える影響の経時的な変化を検討するとともに、ペガプタニブ投与後の総VEGF増加の主たる原因となっているアイソフォームを同定することを目的とした。臨床症例での検討は困難であるのでカニクイザルを用いて実験を行った。カニクイザルの硝子体内にペガプタニブ (0.3 mg/90 μl)を注射し、投与直前、投与1,3,7、日および2,3,4,5,6,7,8週に前房水を採取し、VEGF全アイフォーム, VEGF165b, VEGF121の濃度をELISAを用いて測定した。 ペガプタニブの投与前には前房水中の総VEGF濃度は80.5 ± 15.8 pg/mlであり、投与翌日には急激に増加し155.9 ± 76.7 pg/mlとなり、2週後に最高値205.0 ± 70.7 pg/mlとなった。VEGF165bの濃度も同様の変化を示し、ペガプタニブ投与前には28.7 ± 20.4 pg/mlであり、2週後に最高値60.5 ± 46.7 pg/mlに達し、その後減少した。VGEF121は投与前、投与後の全期間を通じて検出できなかった。 ペガプタニブ投与後の眼内VEGF増加にはアイソフォームによる差異は認めなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
カニクイザルを用いて、正常眼における各種VEGFアイソフォームの濃度をELISAを用いて測定することができた。さらに当初の予定では平成25年に行う予定であったペガプタニブ投与後のVEGFアイソフォームの変化についても予備実験としてデータが得られた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度では概ね目標を計画通りに達成できたが、カニクイザルの実験によって得られた結果を確認するために実験を繰り返す必要がある。 カニクイザル3匹の片眼に臨床で通常用いられている投与量である同様にbevacizumab (1.25mg)あるいはpegaptanib sodium(0.3mg)を硝子体内投与する。投与前、投与翌日、3日目、1週目、2週目、3週目、4週目、6週目、8週目に投与眼の前房水を採取し、全VEGFならびにVEGF165b, VEGF121の濃度を測定し、眼内のVEGFの動態を検討する同時に眼圧上昇や眼内炎を含めた眼内への悪影響の有無を検討するために薬物投与直後、30分後に眼圧測定と眼底検査を行う。投与後の前房水採取時にも細隙灯顕微鏡検査、眼底検査、眼圧検査を行い、眼内の炎症の有無や眼圧変化について臨床的に検討する 血管新生抑制作用をもつVEGF165bの治療薬としての可能性を探るために眼内での薬物動態を解明する。カニクイザルの硝子体内に各種濃度のVEGF165bを投与し、経時的に前房水を採取し、全VEGF量とVEGF165b量を定量し、VEGF165bが眼内のVEGF全体に与える影響を検討する。また、可能性は低いものの対側眼への影響を検討するために、投与しなかった対側眼の前房水も採取し定量する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
カニクイザルの飼育費用、ペガプタニブの薬品、各種VEGFアイソフォームを測定するELISAキットが主たる使用であり、一部は研究成果を発表する学会への参加旅費にも使用する。
|