研究課題/領域番号 |
24592668
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
大路 正人 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (90252650)
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研究分担者 |
柿木 雅志 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (80531516)
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キーワード | VEGF / アイソフォーム / ペガプタニブ |
研究概要 |
加齢黄斑変性の治療薬として認可されているVEGF165の阻害剤であるペガプタニブの硝子体内投与後に眼内VEGFがパラドキシカルに増加することを報告し、その機序を解明するためにアイフォームの変化を検討することを目的に研究を始めた。1年目の結果として、カニクイザルの硝子体内にペガプタニブ (0.3 mg/90 μl)を注射し、経時的に前房水を採取し、VEGFアイフォームの濃度をELISAを用いて測定し、ペガプタニブの投与後に眼内VEGF総量は増加するがアイソフォームによる差異は認めなかったことを報告した。 2年目の研究として、培養細胞を用いて抗VEGF薬投与後のVEGFアイソフォームの変化を検討した。網膜色素上皮由来の細胞であるARPE65細胞を培養し、種々の濃度のペガプタニブを添加し、培養後のVEGFアイソフォームの産生量をWestern blottingで測定した。主たるアイソフォームであるVEGF165の産生量はペガプタニブ添加で濃度によってもほとんど変化がみられなかった。血管新生抑制性のアイソフォームであるVEGF165bの産生量はコントロールであるペガプタニブ無添加群と比較し、ペガプタニブ1.6 μg/mlでは変化が認められなかったが、4.0μg/ml添加群ではVEGF産生量は約2倍となり、その後添加するペガプタニブ濃度が160μg/mlまで高くなるにつれてVEGF産生量は徐々に減少していった。臨床ならびにカニクイザルの実験においてペガプタニブ投与後にVEGFが増加していたのは、低濃度のペガプタニブ投与時のVEGF165bアイソフォームの増加による可能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カニクイザルを用いてVEGF165阻害薬であるペガプタニブ硝子体内投与後に種々のアイソフォーム増加がみられたことに加えて、ARPE65細胞を用いた培養実験において、ペガプタニブ投与時のVEGF各アイソフォームの産生量を測定し、VEGF165の産生量はペガプタニブの濃度により変化がなかったが、血管新生抑制性のアイソフォームであるVEGF165bの産生は低い濃度のペガプタニブでは増加し、高い濃度になると減少しコントロール群の値に近づくことが示された。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度では概ね目標を計画通りに達成できたが、VEGF阻害薬にはVEGF165のみを特異的に阻害するペガプタニブ以外にラニビズマブとアフリベルセプトの2種の薬剤が加齢黄斑変性などに使用することが承認されている。ラニビズマブやアフリベルセプトでもペガプタニブで得られた結果と同様の結果が得られるかどうかを培養実験系を用いて検討するとともに、カニクイザルを用いた動物実験においても合わせて検討する。ARPE65細胞を培養しコンフルエントになった時点で、種々の濃度のラニビズマブあるいはアフリベルセプトを添加し、VEGF165、VEGF165bの産生量をwestern blottingで定量する。カニクイザルの動物実験においては、臨床で用いられる濃度のラニビズマブあるいはアフリベルセプトを硝子体投与し、その後経時的に前房水を採取し、VEGF165およびVEGF165bの濃度をELISAを用いて測定する。 さらに、臨床においては、抗VEGF薬の効果持続期間が必ずしも明らかにはなっていない。加齢黄斑変性と網膜中心静脈閉塞症では眼内のVEGF濃度が上昇しているが、増加の程度が大きく異なり、網膜中心静脈閉塞症では著しい増加がみられている。硝子体内に投与された抗VEGF薬の効果持続期間が疾患により異なる可能性がある。それを検討するためにラニビズマブあるいはアフリベルセプト投与前、投与1ヶ月、投与2か月後に全房水を採取し、前房水中のVEGF濃度を測定すし、抗VEGF薬の効果持続期間を検討する。
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