研究課題/領域番号 |
24592672
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
小林 剛 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座助教 (70380285)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 培養上皮シート / 表皮細胞 / 角膜上皮 / 形質転換 |
研究概要 |
角膜上皮の再生医療は他分野に先駆け臨床応用が行われ、良好な成績が報告されている。しかしながら、現状ではalloの角膜上皮または自家口腔粘膜上皮を用いた培養上皮細胞移植にとどまり臨床的効果は限定的である。自己の細胞(表皮細胞)から形質転換させた角膜上皮細胞を用いることが可能となれば、臨床的効果は飛躍的に改善されると推測される。 我々はこれまでの研究において、角膜上皮特異的サイトケラチン(K12)の発現によりGFPを発現するK12Cre/ZEGマウスを作製し、マウス表皮細胞から角膜上皮様細胞への形質転換が可能であること、さらに形質転換に角膜輪部実質由来の因子が関与する可能性を明らかにしてきた。 本年度の研究では、形質転換による角膜上皮再建に有用な細胞源について検討することを目的に、K12Cre/ZEGマウスの培養表皮(前駆)細胞または表皮sp細胞を調製し、角膜輪部実質由来線維芽細胞との共培養にて角膜上皮様細胞(K12陽性細胞)への形質転換を試みた。その結果、表皮sp細胞と輪部線維芽細胞の共培養においてGFP陽性細胞が認められ、さらにTaqMan® Gene Expression Assay (Applied Biosystems)を用いたRT-PCRによりK12遺伝子の発現が確かめられた。 また、輪部実質細胞由来の因子に着目し、マウス角膜中心部実質と輪部実質由来の線維芽細胞に対してトランスクリプトーム解析を行ったところ、輪部実質由来の線維芽細胞において、Sfrp2を始めとする複数のWntシグナル関連因子mRNAの高発現が認められることが分かった。Wntシグナルは、種々の遺伝子発現を調節することが知られるシグナル伝達経路であり、輪部における上皮細胞の分化制御に関与している可能性がある。今後これらの因子が上皮細胞分化に与える影響についても検討を行いたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、マウス表皮細胞から形質転換した細胞を用いた角膜上皮シートを作製し、ヒト臨床応用の基礎となる動物モデルの確立を目的としている。そのため、使用する細胞源の選択ならびに角膜上皮再建のための培養法に関する種々の検討を段階的に行う必要がある。平成24年度においては、まず本年度の計画であった細胞源についての検討を行い、表皮sp細胞が形質転換による角膜上皮再建に有用である可能性を示すことが出来た。 さらに、輪部実質由来因子に着目してトランスクリプトーム解析を行い、上皮細胞の分化誘導に関与する可能性のある角膜輪部特異的因子の候補遺伝子について解析を進めている。候補遺伝子は分泌タンパク質のコード遺伝子(21種)、細胞外マトリクスの構成タンパク質のコード遺伝子(15種)を含み、今後の角膜上皮再建のための培養法に関する検討を行う上で非常に有用な知見を得ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
マウス表皮細胞から形質転換した細胞を用いた角膜上皮シートを作製し、ヒト臨床応用の基礎となる動物モデルを確立するため、次年度以降において、形質転換による角膜上皮再建のための培養方法について検討する。 本年度の研究において、表皮sp細胞が形質転換による角膜上皮再建に有用である可能性を示すことが出来たことから、sp細胞を用いた培養条件(培養液、添加物、エアリフト)の検討を行うことで、角膜上皮の特徴を持った細胞シートを培養可能にすることを目指す。さらに、マウス角膜中心部実質と輪部実質由来の線維芽細胞に対して行ったトランスクリプトーム解析により得られた角膜輪部特異的因子の候補遺伝子についての解析を進めると共に、移植への応用の可能性を高めるため、器官培養を必要としない細胞シートの培養条件を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
マウスsp細胞を用いた培養条件の検討および角膜輪部特異的因子の解析を行うために研究費を使用する。実験動物の飼育、細胞培養、実験に必要な装置は全て当実験室または愛媛大学総合研究支援センターに保有しており、研究を遂行する環境は整っているため、次年度においては、動物実験用試薬および試料、培養関連試薬、生化学試薬(FACS等)等の消耗品に使用する計画である。
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