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2013 年度 実施状況報告書

マウス表皮細胞から形質転換した角膜上皮様細胞を用いた角膜上皮再建の試み

研究課題

研究課題/領域番号 24592672
研究機関愛媛大学

研究代表者

小林 剛  愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座助教 (70380285)

キーワード培養上皮シート / 表皮細胞 / 角膜上皮 / 形質転換
研究概要

角膜上皮の再生医療は他分野に先駆け臨床応用が行われ、かつて難治とされた瘢痕性角膜疾患において良好な治療成績が報告されている。しかしながら、現状では他家角膜上皮または自家口腔粘膜上皮を用いた培養上皮移植にとどまり臨床的効果は限定的である。自己の表皮細胞から形質転換した角膜上皮細胞を用いることが可能となれば、限られた細胞源しかない角膜上皮再生治療に非常に有用と考えられる。
我々は、まず角膜上皮特異的サイトケラチン(K12)の発現によりGFPを発現するK12Cre/ZEGマウスを作製し、角膜輪部実質上においてマウス表皮由来細胞から角膜上皮様細胞への形質転換が可能であることを明らかにした。また、輪部実質細胞由来の因子に着目し、マウス角膜中心部実質と輪部実質由来の線維芽細胞に対してトランスクリプトーム解析を行ったところ、輪部実質由来線維芽細胞において、Sfrp2を始めとする複数のWntシグナル関連因子の高発現が認められることが分かった。
これらの因子が上皮細胞分化に与える影響について検討し、形質転換誘導因子の同定を行うため、効率的に因子のスクリーニングが可能な培養系の確立を試みた。本検討では、まずマウス輪部実質線維芽細胞(MLF)を培養、マイトマイシンC(MMC)処理を行った。さらに、生後0日のマウスの表皮からside population(sp)細胞をFACSにより分取し、MMC処理後のMLF上に播種して培養を行った。Real-time PCRによりK12遺伝子の発現を調べたところ、表皮sp細胞でのK12遺伝子発現を定量可能であることが分かった。一方で、MLFまたは表皮sp細胞を単独で培養した場合にはK12遺伝子の発現は認めなかった。本培養系を用いることで、輪部実質特異的因子が上皮細胞分化に与える影響について解析し、形質転換誘導因子のスクリーニングが可能になると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、マウス表皮細胞から形質転換した細胞を用いた角膜上皮シートを作製し、ヒト臨床応用の基礎となる動物モデルの確立を目的としている。そのため、使用する細胞源の選択ならびに角膜上皮再建のための培養法に関する種々の検討を段階的に行う必要がある。我々はこれまでに、表皮sp細胞が形質転換による角膜上皮再建に有用である可能性を示すと共に、輪部実質由来因子に着目してトランスクリプトーム解析を行い、上皮細胞の分化誘導に関与する可能性のある角膜輪部特異的因子の候補遺伝子について解析を進めてきた。候補遺伝子は分泌タンパク質のコード遺伝子(21種)、細胞外マトリクスの構成タンパク質のコード遺伝子(15種)を含んでいる。これらの因子がマウス表皮由来細胞の分化に与える影響について検討し、形質転換誘導因子の同定を行うため、効率的に因子のスクリーニングが可能な培養系の確立が必要不可欠であった。そこで、MMC処理後の輪部実質由来線維芽細胞をフィーダーとした表皮sp細胞の培養系について検討を行い、本培養系において、表皮sp細胞での角膜上皮分化マーカー遺伝子の発現を定量的に解析出来ることを明らかにした。

今後の研究の推進方策

マウス表皮細胞から形質転換した細胞を用いた角膜上皮シートを作製し、ヒト臨床応用の基礎となる動物モデルを確立するため、今後、形質転換による角膜上皮再建のための培養方法について検討を行う。MMC処理後の輪部実質由来線維芽細胞をフィーダーとした表皮sp細胞の培養系を用いることで、トランスクリプトーム解析により得られた角膜輪部特異的因子が上皮細胞分化に与える影響について解析を進めると共に、形質転換誘導因子のスクリーニングを継続的に行う。さらに、これらの因子に関して得られた知見を応用し、表皮sp細胞を用いた培養条件(培養液、添加物、エアリフト)の検討を行うことで、角膜上皮の特徴を持った細胞シートを培養可能にすることを目指す。また、移植への応用の可能性を高めるため、器官培養を必要としない細胞シートの培養条件について検討する。

次年度の研究費の使用計画

次年度使用額(7,925円)が生じた理由は、培養実験の一部について、現在遂行中の実験の結果を踏まえて次年度に行う方が適切であると判断したためである。その他当初の研究計画で想定していた研究は計画通りに実行し、成果を上げている。
マウス表皮sp細胞を用いた培養条件の検討を行うために研究費を使用する。細胞培養、実験に必要な装置は全て当実験室または愛媛大学総合研究支援センターに保有しており、研究を遂行する環境は整っているため、培地添加物等の消耗品に使用する計画である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Genotypic analysis of Pseudomonas aeruginosa isolated from ocular infection2014

    • 著者名/発表者名
      Yamaguchi S, Suzuki T, Kobayashi T, Oka N, Ishikawa E, Shinomiya H, Ohashi Y
    • 雑誌名

      J Infect Chemother

      巻: 20 ページ: 407-11

    • DOI

      10.1016/j.jiac.2014.02.007

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Differences between niche cells and limbal stromal cells in maintenance of corneal limbal stem cells2014

    • 著者名/発表者名
      Li Y, Inoue T, Takamatsu F, Kobayashi T, Shiraishi A, Maeda N, Ohashi Y, Nishida K.
    • 雑誌名

      Invest Ophthalmol Vis Sci

      巻: 55 ページ: 1453-62

    • DOI

      10.1167/iovs.13-13698

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 各種フルオロキノロン系抗菌点眼液がヒト培養角膜上皮細胞に与える影響についての検討2013

    • 著者名/発表者名
      小林 剛, 樋口(渡部) 成美, 白石 敦, 大橋 裕一
    • 雑誌名

      医学と薬学

      巻: 70 ページ: 61-66

  • [学会発表] ドライアイモデルマウスの結膜囊内涙液貯留量に及ぼすビサコジル点眼の影響2014

    • 著者名/発表者名
      小林剛
    • 学会等名
      第38回日本角膜学会総会
    • 発表場所
      沖縄県宜野湾市
    • 年月日
      20140130-20140201
  • [産業財産権] 眼科用組成物2013

    • 発明者名
      大橋 裕一, 白石 敦, 小林 剛
    • 権利者名
      国立大学法人愛媛大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2013-077862
    • 出願年月日
      2013-04-03

URL: 

公開日: 2015-05-28  

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