研究実績の概要 |
1.黄斑円孔の手術の祭に、indocyanine green (ICG), brilliant blue G (BBG)あるいはtriamcinolone acetonide (TA)を用いて増殖膜および内境界膜を染色する。これらの染色剤の網膜内層への影響を錐体ERGで検討した。その結果、ICGを用いた場合は、術後にphotopic negative response (PhNR)の振幅が低下し、術前のレベルまで回復しないことが判明した。BBGでは、術後1ヶ月で一過性のPhNR振幅低下があるが、3ヶ月では正常レベルに回復した。TAでは、PhNR振幅低下は認められなかった。ICGを使用すると潜在性の網膜神経節細胞障害が生じることを示している。 2.AMDに対するラニミズマブ(IVR)治療後の黄斑機能を黄斑局所ERGで評価した。治療開始後3ヶ月での網膜外、中および内層の機能は漿液性網膜剥離の変化の影響を最も強く受けることがわかった。 3.緑内障では網膜内層は菲薄化する。網膜内層の厚さをganglion cell complex (GCC)として光干渉断層計(OCT)で計測した。網膜内層機能を黄斑局所ERGのPhNRを用いて評価し、黄斑部と傍黄斑部でPhNR振幅とGCC厚との関係をregression lineで表した。黄斑部では傍黄斑部に比較してregression lineのslopeが急峻であった)。 4.黄斑円孔術後にも黄斑部のGCCは菲薄化する。緑内障ではGCCの菲薄化に伴ってPhNR振幅が低下した。一方、黄斑円孔術後ではGCCが菲薄化してもPhNR振幅は保たれていた。形態-機能の関係が、これらの疾患では異なることが明らかとなった。黄斑術後のGCC菲薄化は網膜神経節細胞の変性・喪失を示す所見ではないと考えられた。 網膜内層の機能変化は眼内手術・治療あるいはその他の眼底疾患でも生じており、形態-機能の関係においては疾患特異性がみられた。
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