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2012 年度 実施状況報告書

マイクロRNAを標的としたベーチェット病における抗TNF抗体治療の分子機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24592678
研究種目

基盤研究(C)

研究機関杏林大学

研究代表者

岡田 アナベル・あやめ  杏林大学, 医学部, 教授 (50303962)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードぶどう膜炎
研究概要

失明率の高い難治性のぶどう膜網膜炎であるベーチェット病に対して、2007年1月に生物学的製剤である抗TNF-α抗体(インフリキシマブ)が保険適応され、その有効性が報告されている。これまで抗TNF-α抗体治療の作用機序についての報告は散見されるものの、その分子機序に関する詳細は不明な点が多い。microRNA (miRNA)は機能性non-coding RNAの中のひとつの分子群で、20-24塩基長程の低分子RNAであり、相補的な配列をもつ標的mRNAの分解、翻訳を制御することで機能している。本研究課題ではマイクロアレイの手法を用いて、インフリキシマブ治療前後の末梢血単核球のmiRNAに関する網羅的な遺伝子発現解析を施行し、miRNAの変動、miRNAと眼活動性との関連について検討を行った。
今年度はmiRCURY LNA microRNA Arrayを用いて5例のベーチェット病ぶどう膜網膜炎患者の末梢血単核球を用いてインフリキシマブ治療前、および治療開始後のmiRNAの発現について検討を行った。5例全例でインフリキシマブ治療開始後に眼炎症発作の抑制がみられた。マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現の検討では、治療前の遺伝子発現を基準として治療前後の発現比を計算し、2倍以上の発現上昇があったものを発現上昇、1/2以下に発現が低下したものを発現低下と定義した。その結果、5例に共通して発現の上昇したmiRNAはみられず、症例により発現のばらつきが認められた。一方で5例に共通して発現の低下したmiRNAはなかったものの、5例中3例でmiRNA144とmiRNA130の発現の低下がみられた。ベーチェット病ぶどう膜網膜炎に対するインフリキシマブの作用機序として末梢血単核球細胞中のmiRNAの発現低下が関連している可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題ではマイクロアレイの手法を用いて、ベーチェット病ぶどう膜網膜炎患者におけるインフリキシマブ治療前後の末梢血単核球のmiRNAについて網羅的な遺伝子発現解析を施行し、miRNAと眼活動性との関連、miRNAの発現変動、miRNAとベーチェット病ぶどう膜炎との関連について検討を行った。
平成24年度は5例のベーチェット病ぶどう膜網膜炎患者からインフリキシマブ治療前、および治療開始22週間後に末梢血を採取、単核球を分離し、total RNA抽出し、12312個のプローブを搭載したmiRCURY LNA microRNA Arrayを用いてベーチェット病ぶどう膜網膜炎患者からインフリキシマブ治療前、および治療開始後のmiRNAの発現について検討を行った。また診療録を用いて眼発作回数とmiRNAの発現変動との関連について検討を行った。
その結果、1) インフリキシマブ開始前6ヶ月間に比較して、開始後6ヶ月では5例全例で眼炎症発作がみられなかった。2) マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現の検討では、治療前の遺伝子発現を基準として治療前後の発現比を計算し、2倍以上の発現上昇があったものを発現上昇、1/2以下に発現が低下したものを発現低下と定義した。その結果、5例に共通して発現の上昇したmiRNAはみられず、症例により発現のばらつきが認められた。一方で5例に共通して発現の低下したmiRNAはなかったものの、5例中3例でmiRNA144とmiRNA130の発現の低下がみられた。ベーチェット病ぶどう膜網膜炎に対するインフリキシマブの作用機序として末梢血単核球細胞中のmiRNAの発現低下が関連している可能性が示唆された

今後の研究の推進方策

本研究課題ではマイクロアレイの手法を用いて、ベーチェット病ぶどう膜網膜炎患者におけるインフリキシマブ治療前後の末梢血単核球のmiRNAについて網羅的な遺伝子発現解析を施行した。その結果、治療前後のmiRNAの発現について全例で共通して発現の上昇したmiRNA、または低下したmiRNAは認められなかった。一方でインフリキシマブ開始後、全例で眼炎症発作、ならびに蛍光眼底造影検査を用いた網膜血管炎スコアは低下しており、インフリキシマブによって眼炎症の活動性は抑制されていた。今回のmiRNAの発現変動と個々の症例の眼炎症活動性との関連について理解するために、平成26 年度は以下の項目について検討予定している。
1) 新規インフリキシマブ導入症例に対してインフリキシマブ治療前後で発現が上昇、低下したmiRNAを同定し、平成24年度に確認された個々のmiRNAと同一のもの、または異なったものが発現上昇・低下しているか検討する。2)発現上昇、または低下のみられたmiRNAについてmiRBaseなどのデータベースを用いて個々のmiRNAの機能を解析し、ベーチェット病ぶどう膜炎の活動性とmiRNAとの関連について検討する。3)平成24年度、25年度中に発現の上昇、低下が確認された miRNAについて定量PCR法を用いて発現量を定量する。4) 同一の検体からRNAを抽出し、サイトカイン、ケモカインなどの炎症関連分子の発現を網羅的に解析し、炎症関連分子の発現変動とmiRNAの発現変動との関連について検討を行う。

次年度の研究費の使用計画

1) miRCURY LNA microRNA Arrayを用いたインフリキシマブ治療前後のmiRNAの発現解析
新規インフリキシマブ導入症例に対してインフリキシマブ治療前後で発現が上昇、低下したmiRNAを同定する。同定されたmiRNAについて平成24年度に変動が確認されたmiRNAと同一のもの、または異なったものが発現上昇・低下しているか検討する。さらにインフリキシマブ治療前後で発現上昇、低下が確認されたmiRNAについて定量PCR法を用いて発現量を定量する。また治療開始後の眼炎症の活動性とmiRNAの発現との関連について診療録をもとに解析を行う。
2) インフリキシマブ治療前後の炎症関連分子群の発現解析
近年、自然免疫機能の調整にmiRNA-146やmiRNA-155など多数のmiRNAが連携して作用していることが報告されている (O’Connnell et al. Nat Rev Immunol 10; 111-122, 2010)。そこで同一の検体からmRNAを抽出し、サイトカイン、ケモカインなどの炎症関連分子の発現を網羅的に解析し、炎症関連分子の発現変動とmiRNAの発現変動との関連について検討を行う。また発現上昇、または低下のみられたmiRNAについてmiRBaseなどのデータベースを用いて個々のmiRNAの機能を解析し、ベーチェット病ぶどう膜炎の活動性とmiRNAとの関連について検討する。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Enhanced depth imaging optical coherence tomography of the choroid in recurrent unilateral posterior scleritis2013

    • 著者名/発表者名
      Taki W, Keino H, Watanabe T, Okada AA
    • 雑誌名

      Graefe's Arch Clin Exp Ophthalmol

      巻: 251 ページ: 1003-1004

    • DOI

      10.1007/s00417-012-1972-1

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Enhanced depth imaging optical coherence tomography of the choroid in Vogt-Koyanagi-Harada disease2012

    • 著者名/発表者名
      Nakayama M, Keino H, Okada AA, Watanabe T, Taki W, Inoue M, Hirakata A
    • 雑誌名

      Retina

      巻: 32 ページ: 2061-2069

    • DOI

      10.1097/IAE.0b013e318256205a

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Multicenter study of infliximab for refreacory uveoretinitis in Behcet’s disease2012

    • 著者名/発表者名
      Okada AA, Goto H, Ohno S, Mochizuki M; Ocular Behcet's Disease Research Group of Japan
    • 雑誌名

      Arch Ophthalmol

      巻: 1302 ページ: 592-598

    • DOI

      10.1001/archophthalmol.2011.2698

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Clinical spectrum of tuberculous optic neuropathy2012

    • 著者名/発表者名
      Davis EJ, Rathinam SR, Okada AA, Tow SL, Petrushkin H, Graham EM, Chee SP, Guex-Crosier Y, Jakob E, Tugal-Tutkun I, Cunningham ET Jr, Leavitt JA, Mansour AM, Winthrop KL, Hills WL, Smith JR
    • 雑誌名

      J Ophthalmic Inflamm Infect

      巻: 2 ページ: 183-189

    • DOI

      10.1007/s12348-012-0079-5

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Clinical features of 246 patients with intraocular lymphoma2012

    • 著者名/発表者名
      Kimura K, Usui Y, Goto H and the Japanese Intraocular Lymphoma Study Group
    • 雑誌名

      Jpn J Ophthalmol

      巻: 56 ページ: 383-389

    • DOI

      10.1007/s10384-012-0150-7

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Factors associated with anatomic and visual outcomes in acute retinal necrosis2012

    • 著者名/発表者名
      Iwahashi-Shima C, Azumi A, Ohguro N, Okada AA, Kaburaki T, Goto H, Sonoda K-H, Namba K, Mizuki N, Mochizuki M
    • 雑誌名

      Jpn J Ophthalmol

      巻: 57 ページ: 98-103

    • DOI

      10.1007/s10384-012-0211-y

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Exudative retinal astrocytic hamartoma diagnosed and treated with pars plana vitrectomy and intravitreal bevacizumab2012

    • 著者名/発表者名
      Nakayama M, Keino H, Hirakata A, Okada AA, Terado Y
    • 雑誌名

      Eye

      巻: 26 ページ: 1272-1273

    • DOI

      10.1038/eye.2012.124

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Ancillary testing, diagnosis/classification criteria and severity grading in Behcet disease2012

    • 著者名/発表者名
      Okada AA, Stanford M, Tabbara K
    • 雑誌名

      Ocul Immunol Inflamm

      巻: 20 ページ: 387-393

    • DOI

      10.3109/09273948.2012.723111

    • 査読あり
  • [学会発表] EDI-OCTを用いた交感性眼炎回復期の脈絡膜厚の評価2012

    • 著者名/発表者名
      慶野博、渡辺交世、瀧 和歌子、岡田アナベルあやめ
    • 学会等名
      第66回日本臨床眼科学会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      20121025-20121028
  • [学会発表] インフリキシマブ長期投与ベーチェット病患者の蛍光眼底造影像の推移2012

    • 著者名/発表者名
      慶野博、渡辺交世、瀧和歌子、岡田アナベルあやめ
    • 学会等名
      第46回日本眼炎症学会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      20120714-20120716
  • [学会発表] 網膜動静脈閉塞症に対してステロイドパルス療法が奏功したSLE網膜症の1例2012

    • 著者名/発表者名
      肥留川京子、慶野博、渡辺交世、瀧和歌子、平形明人、岡田アナベルあやめ
    • 学会等名
      第46回日本眼炎症学会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      20120714-20120716
  • [学会発表] インフリキシマブ治療を導入した若年性ベーチェット病ぶどう膜網膜炎の2症例2012

    • 著者名/発表者名
      渡辺交世、慶野博、瀧和歌子、越前成旭、岡田アナベルあやめ
    • 学会等名
      第116回日本眼科学会総会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20120405-20120408

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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