研究課題
基盤研究(C)
失明率の高い難治性のぶどう膜網膜炎であるベーチェット病に対して、2007年1月に生物学的製剤である抗TNF-α抗体(インフリキシマブ)が保険適応され、その有効性が報告されている。これまで抗TNF-α抗体治療の作用機序についての報告は散見されるものの、その分子機序に関する詳細は不明な点が多い。microRNA (miRNA)は機能性non-coding RNAの中のひとつの分子群で、20-24塩基長程の低分子RNAであり、相補的な配列をもつ標的mRNAの分解、翻訳を制御することで機能している。本研究課題ではマイクロアレイの手法を用いて、インフリキシマブ治療前後の末梢血単核球のmiRNAに関する網羅的な遺伝子発現解析を施行し、miRNAの変動、miRNAと眼活動性との関連について検討を行った。今年度はmiRCURY LNA microRNA Arrayを用いて5例のベーチェット病ぶどう膜網膜炎患者の末梢血単核球を用いてインフリキシマブ治療前、および治療開始後のmiRNAの発現について検討を行った。5例全例でインフリキシマブ治療開始後に眼炎症発作の抑制がみられた。マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現の検討では、治療前の遺伝子発現を基準として治療前後の発現比を計算し、2倍以上の発現上昇があったものを発現上昇、1/2以下に発現が低下したものを発現低下と定義した。その結果、5例に共通して発現の上昇したmiRNAはみられず、症例により発現のばらつきが認められた。一方で5例に共通して発現の低下したmiRNAはなかったものの、5例中3例でmiRNA144とmiRNA130の発現の低下がみられた。ベーチェット病ぶどう膜網膜炎に対するインフリキシマブの作用機序として末梢血単核球細胞中のmiRNAの発現低下が関連している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題ではマイクロアレイの手法を用いて、ベーチェット病ぶどう膜網膜炎患者におけるインフリキシマブ治療前後の末梢血単核球のmiRNAについて網羅的な遺伝子発現解析を施行し、miRNAと眼活動性との関連、miRNAの発現変動、miRNAとベーチェット病ぶどう膜炎との関連について検討を行った。平成24年度は5例のベーチェット病ぶどう膜網膜炎患者からインフリキシマブ治療前、および治療開始22週間後に末梢血を採取、単核球を分離し、total RNA抽出し、12312個のプローブを搭載したmiRCURY LNA microRNA Arrayを用いてベーチェット病ぶどう膜網膜炎患者からインフリキシマブ治療前、および治療開始後のmiRNAの発現について検討を行った。また診療録を用いて眼発作回数とmiRNAの発現変動との関連について検討を行った。その結果、1) インフリキシマブ開始前6ヶ月間に比較して、開始後6ヶ月では5例全例で眼炎症発作がみられなかった。2) マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現の検討では、治療前の遺伝子発現を基準として治療前後の発現比を計算し、2倍以上の発現上昇があったものを発現上昇、1/2以下に発現が低下したものを発現低下と定義した。その結果、5例に共通して発現の上昇したmiRNAはみられず、症例により発現のばらつきが認められた。一方で5例に共通して発現の低下したmiRNAはなかったものの、5例中3例でmiRNA144とmiRNA130の発現の低下がみられた。ベーチェット病ぶどう膜網膜炎に対するインフリキシマブの作用機序として末梢血単核球細胞中のmiRNAの発現低下が関連している可能性が示唆された
本研究課題ではマイクロアレイの手法を用いて、ベーチェット病ぶどう膜網膜炎患者におけるインフリキシマブ治療前後の末梢血単核球のmiRNAについて網羅的な遺伝子発現解析を施行した。その結果、治療前後のmiRNAの発現について全例で共通して発現の上昇したmiRNA、または低下したmiRNAは認められなかった。一方でインフリキシマブ開始後、全例で眼炎症発作、ならびに蛍光眼底造影検査を用いた網膜血管炎スコアは低下しており、インフリキシマブによって眼炎症の活動性は抑制されていた。今回のmiRNAの発現変動と個々の症例の眼炎症活動性との関連について理解するために、平成26 年度は以下の項目について検討予定している。1) 新規インフリキシマブ導入症例に対してインフリキシマブ治療前後で発現が上昇、低下したmiRNAを同定し、平成24年度に確認された個々のmiRNAと同一のもの、または異なったものが発現上昇・低下しているか検討する。2)発現上昇、または低下のみられたmiRNAについてmiRBaseなどのデータベースを用いて個々のmiRNAの機能を解析し、ベーチェット病ぶどう膜炎の活動性とmiRNAとの関連について検討する。3)平成24年度、25年度中に発現の上昇、低下が確認された miRNAについて定量PCR法を用いて発現量を定量する。4) 同一の検体からRNAを抽出し、サイトカイン、ケモカインなどの炎症関連分子の発現を網羅的に解析し、炎症関連分子の発現変動とmiRNAの発現変動との関連について検討を行う。
1) miRCURY LNA microRNA Arrayを用いたインフリキシマブ治療前後のmiRNAの発現解析新規インフリキシマブ導入症例に対してインフリキシマブ治療前後で発現が上昇、低下したmiRNAを同定する。同定されたmiRNAについて平成24年度に変動が確認されたmiRNAと同一のもの、または異なったものが発現上昇・低下しているか検討する。さらにインフリキシマブ治療前後で発現上昇、低下が確認されたmiRNAについて定量PCR法を用いて発現量を定量する。また治療開始後の眼炎症の活動性とmiRNAの発現との関連について診療録をもとに解析を行う。2) インフリキシマブ治療前後の炎症関連分子群の発現解析近年、自然免疫機能の調整にmiRNA-146やmiRNA-155など多数のmiRNAが連携して作用していることが報告されている (O’Connnell et al. Nat Rev Immunol 10; 111-122, 2010)。そこで同一の検体からmRNAを抽出し、サイトカイン、ケモカインなどの炎症関連分子の発現を網羅的に解析し、炎症関連分子の発現変動とmiRNAの発現変動との関連について検討を行う。また発現上昇、または低下のみられたmiRNAについてmiRBaseなどのデータベースを用いて個々のmiRNAの機能を解析し、ベーチェット病ぶどう膜炎の活動性とmiRNAとの関連について検討する。
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