研究課題
ドライアイは涙液の量的または質的な異常により引き起こされる角膜上皮傷害と定義される疾患である。現在、ドライアイ治療として人工涙液や自己血清点眼治療などが行われているが、その効果は短期間のみであることから、より効果的なドライアイ治療薬の創出が切望されている。また、ドライアイの原因解明および治療法を開発するためにはドライアイモデル動物を用いた解析が必要不可欠であるが、現在までに有用なドライアイモデル動物は十分に確立されていないのが現状である。申請者はこれまでに下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)の遺伝子欠損(KO)マウスが角膜表面の角質化と涙液分泌低下というドライアイ様症状を呈すること、さらにPACAPをマウスに点眼することにより涙液分泌を促進させることを見出した。さらに昨年の課題において、PACAPが涙腺組織の涙液産生細胞である腺房細胞に作用し、水チャネルであるアクアポリン5を細胞膜から細胞質に誘導することにより涙液分泌を促進することを報告した。今年度は涙腺組織ではなく角膜組織に着目し、PACAP点眼による角膜治癒促進効果の評価を行った。マウスに生検用パンチにより角膜上皮のみ円形に剥離し、その後の角膜上皮修復過程においてPACAPを2時間おきに連続点眼したところ、PACAP点眼群では生理的食塩水点眼群と比較して有意に角膜上皮の修復が促進した。マウスの角膜上皮におけるPACAP受容体の発現をPCR法および免疫染色法により確認したところ、PACAP受容体であるPAC1RのmRNAが角膜上皮由来のトータルRNAより検出され、PAC1R免疫陽性反応が角膜上皮基底部に観察された。以上の結果から、PACAPは角膜上皮に作用し、角膜の保護・再生を促進する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
計画当初予定していたPACAPによる涙液分泌促進機構に関する研究は既に十分な成果が得られており、また角膜上皮傷害に対する作用に関しても実験系の確立を終え、PACAPによる角膜上皮再生促進作用の評価にまで至っていることから、予定通り実験計画が進行している。
最終年度として、PACAPによる涙液分泌促進作用と角膜上皮再生促進作用がお互いにどのように相互作用しているのかを明らかにする。 さらにPACAP遺伝子欠損マウスを用いることにより、内因性PACAPが角膜上皮再生促進作用に関連しているかどうかを解析し、さらにヒト角膜上皮細胞を用いたPACAPの角膜上皮への影響を評価する予定である。
本年度行う予定であった培養細胞を用いた角膜傷害モデルの作出が安定しなかったため、予定していた分子生物学的解析などに関する試薬の購入を差し控えた為に残金が発生した。次年度は使用する角膜培養細胞を別のセルラインに変更することを優先する。 さらに最終年度ということで、これまでの業績を発表する国際学会などへの旅費などにも一部補填し、論文投稿に関する費用にも充てる予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
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