研究課題/領域番号 |
24592681
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
關 保 昭和大学, 医学部, 兼任講師 (10245855)
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研究分担者 |
中町 智哉 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 助教 (30433840)
渡邊 潤 昭和大学, 遺伝子組換え実験室, 助教 (50649069)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 緑内障 / PACAP / 神経保護 / マイクログリア / マクロファージ |
研究実績の概要 |
緑内障は網膜神経細胞が進行的に細胞死を起こす疾患であり、重篤化すると失明に至る。現在緑内障に対する治療法は眼圧を下げる対症療法のみであり、網膜神経細胞を保護する根本的な治療法の開発が望まれている。そこで我々は神経保護作用を有する神経ペプチド、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)に注目し緑内障に対する治療効果について検討してきた。 NMDA硝子体内投与による緑内障モデルマウスを作成し、PACAPの硝子体内投与を行ったところ、神経細胞死を有意に抑制することが明らかとなった。またPACAPヘテロ型欠損マウスでは細胞死が増加したいた。この結果によPACAPが緑内障に対して治療効果を持つことが示唆された。さらに緑内障モデルマウスにPACAPを硝子体内投与すると、網膜内顆粒層で細胞分裂マーカーのBrdU陽性細胞が有意に増加したいた。免疫染色による細胞同定を行ったところ、BrdU陽性細胞の多くはマイクログリア/マクロファージのマーカーであるIba1陽性であった。またこの時、マイクログリア/マクロファージは神経保護的に活性化していた。 本年度はPACAPが直接マイクログリア/マクロファージに作用しているかどうかを調べるために、PACAPの受容体であるPAC1-Rの局在について調べた。するとPAC1-Rの陽性反応はマイクログリア/マクロファージのマーカーであるCD11bとは重ならず、隣接する顆粒細胞に発現していることが明らかとなった。この結果からPACAPは神経細胞に作用し、間接的にマイクログリア/マクロファージの増殖と神経保護的な活性化を促進することによって神経保護作用を有することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は研究分担者の中町智哉が昭和大学から富山大学に移動したため、動物実験を行うことができなくなった。新たに研究分担者となった渡邊潤がそのモデル作成を引継いだが同様のモデルを作成できるようになるために時間がかかってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の結果からPACAPの受容体が神経細胞に発現していること、さらにPACAPが間接的にマクロファージ、マイクログリアの増殖と神経保護的な活性化を促進していることが明らかとなった。今後は神経細胞とマクロファージ、マイクログリア間の相互作用について解析していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
分担研究者の中町智哉が研究期間中に昭和大学から富山大学へと移動したが、富山大学にはマウスの飼育設備がないために、マウスを用いた実験は分担研究者の渡邊潤が行うこととなった。その際に、研究技術の引継ぎを行う必要があり、習得に時間を要した。そのために予定していた実験を行うことができず未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度はマウスに対し免疫細胞のコンディショナルなノックアウトを行い、今まで明らかにしてきた神経保護因子と免疫細胞の関係性を明らかとする。未使用額は動物購入費・維持費・試薬代と論文準備・学会発表の経費に充てることとしたい。
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