研究実績の概要 |
目的)特発性黄斑上膜の病態を生化学的な面から検討する目的で,セリンプロテアーゼの一つであるトリプターゼおよび抗2型コラーゲン抗体との関連について調べる。 対象と方法) 網膜硝子体疾患の硝子体手術時に硝子体を採取し,トリプターゼ活性を測定した。対象は54例54眼で, 疾患の内訳は特発性黄斑円孔14例14眼,増殖糖尿病網膜症14例14眼,特発性黄斑上膜13例13眼,裂孔原性網膜剥離13例13眼であった。トリプターゼ活性は,吸光度分析法を用いて測定した。抗2型コラーゲン抗体は特発性黄斑上膜患者の血清15例を用い, コントロ-ルには白内障手術症例の血清を10例用いた。抗2型コラーゲン抗体の測定にはhuman/monkey anti-type type II collagen IgG assay kitを用いた。 結果) 特発性黄斑円孔,増殖糖尿病網膜症,特発性黄斑上膜,裂孔原性網膜剥離の硝子体中のトリプターゼ活性はそれぞれ,0.0146±0.0053, 0.0018±0.0018,0.0166±0.0046, 0.0117±0.0029 mU/mg protein(平均±標準偏差)で,特発性黄斑円孔と特発性黄斑上膜が有意に高値を呈した(p<0.05,Fisher PSLD 検定)。抗2型コラーゲン抗体価は, 特発性黄斑上膜が56.417 ±35.627 units/mlであったのに対して, コントロ-ルは30.424 ±16.128 units/mlで,特発性黄斑上膜が有意に高値を呈した(p=0.042, Mann-Whitney test.)。 結論) 特発性黄斑上膜では, 硝子体中のトリプターゼ活性上昇が組織の線維化に, 血清中の抗2型コラーゲン抗体上昇が網膜硝子体界面の免役反応に関与して膜形成が生じている可能性が示唆された。
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