研究概要 |
アデノウイルス(HAdV)Dは流行性角結膜炎を生じ,臨床的にも公衆衛生学的にも重要な病原体である。ガンシクロビルはサイトメガロウイルス,単純ヘルペスウイルス,水痘帯状疱疹ウイルスなどへの有効性がin vitroで報告されている。今回は下記の方法で,結膜炎を人に生じる型に対して,ガンシクロビルの有効性を検討した。A549細胞による培養系を用い,本邦の結膜炎起炎型である3, 4, 8, 19aおよび37型を用いた。増殖抑制作用の評価には薬剤自体の細胞毒性を検討した後,ガンシクロビルをその希釈倍率の種々の濃度でHAdVに24時間作用させ,さらに7日間培養し,定量PCR法でアデノウイルスDNAを測定すした。指標としては細胞毒性のCC50(50% cytotoxic concentration)とEC50(50% effective concentration)およびそれらの比である選択指数を用いた。 ガンシクロビルのCC50は212 µg/mlであった。ガンシクロビルのEC50は型によって異なっていたが,2.64~5.10 µg/mlであった。有意な増殖抑制効果はすべての型について見ることができた。選択指数は41.6~80.3であり,良好であると考えられた。 ガンシクロビルにはHAdVの3, 4, 8, 19aおよび37型に有意な抑制作用が見られた。これらの結果から,今後この薬物をアデノウイルス眼感染症の治療薬として使う可能性が示された。
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