研究課題
新型のアデノウイルスである53型,54型および56型のそれぞれ臨床分離株と19型から新型と新しく決定された64型,そして近年発症者数の多い4型の5型について,抗HIV薬として用いられているスタブジンを用いて,そのアデノウイルス増殖抑制作用を検討した。 スタブジンは核酸系逆転写酵素阻害薬に属し,従来の結膜炎起炎型には有効性があると報告されている。抗アデノウイルス作用については下記のようにin vitroで検討した。A549細胞による培養系を用い,上記の4型の臨床分離株および4型標準株を用いた。増殖抑制作用の評価には薬剤自体の細胞毒性をMTS法で検討した後,スタブジンをその結果をもとに決定した希釈倍率の種々の濃度でアデノウイルスに24時間作用させ,さらに7日間培養し,定量PCR法でアデノウイルスDNAを測定する。指標としては細胞毒性のCC50(50% cytotoxic concentration)とEC50(50% effective concentration)を算出し,それらの比である選択指数によって,これまで検討されてきた抗アデノウイルス薬との対比を行ってその臨床的な有用性を評価した。その結果,スタブジンは64型と4型については有意な増殖抑制作用がみられた。また新規の型である53,54及び56型についても同様に濃度依存性の有意な増殖抑制作用がみられた。選択指数はこれまで報告された他の型と大きな違いはなく,スタブジンは新しく報告されたアデノウイルス型に対しても有効であることが確認された。今回報告した型は4型を除いていずれもD種に属するわが国で結膜炎の流行を近年生じている型であるため,スタブジンの有効性は本症の治療管理の上で有用であることが示唆された。
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