マウスrx-gfp ES(129株)細胞及び nrl-gfp iPS(B6株)細胞からの立体網膜分化培養を行い、ほぼ分化組織の分化日数が胎生期の網膜発生日数に相当すること、それらを網膜下に移植すると、移植時の分化日数に応じて胎児・生後網膜の移植と同様な移植後の生着/分化がみられることを確認した。次に、胎生早期に相当する早期分化段階からの網膜組織を網膜変性末期モデル(rd1:C3H、B6)に移植し、生着・分化を解析したところ、分化日数17日齢(胎生17日令相当)より若い移植片では、効率よく視細胞の層構造を保った状態で移植片が生着し、それ以降の分化段階の移植片ではしばしば構造がくずれて細胞移植のような状態で生着することがわかった。層構造を保って生着した移植片ではほぼ生体内の網膜と遜色ないような視細胞の成熟を示す外節構造の完成もみられ、これら分化組織が移植片として十分な質をもつと考えられた。移植後の形態、生着期間から、早期分化段階のシート移植が既報で良いとされている生後網膜の細胞移植より優位である可能性を観察した。また、3次元的免疫組織学的観察により、ホスト双極細胞と移植片視細胞の間にシナプスが形成されている可能性が示唆された。移植の種適合性についてはB6の自家移植でもっとも効率よくシナプス形成が得られる傾向を観察した。移植後網膜を摘出して多電極アレイによる解析を行い、移植片の光応答能を確認したが、ホスト細胞へのシナプスを経た信号伝達については薬剤によるシナプス遮断や組織像との照合を行い、より詳細な確認を進めているところである。行動検査では危険回避テストのシステムを立ち上げ、光に反応して危険回避する行動からの評価系を立ち上げ、現在解析中である。
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