研究課題
肝芽腫は、小児期に発生する原因不明の悪性腫瘍である。本疾患は早期発見が困難であり他臓器に転移を有するケースが多いため、術後の予後予測マーカーの発見が待たれている。しかしながら肝芽腫は発生頻度が寡少であるため、腫瘍の分子生物学的解析が困難であり、明確なメカニズムはいまだ不明である。近年、様々なシグナル因子のなかでも、接着因子が転移予測に関するバイオマーカーとして注目されている。がん胎児抗原関連細胞接着分子(CEACAM; carcinoembryonic antigen-related cell adhesion molecule)は、細胞増殖・遊走・分化に深く関与している接着因子である。CEACAMは、8つのファミリー因子で構成されており、なかでもCEACAM1はがん細胞の増殖に大きく影響することで知られている。そこで本研究では、肝芽腫におけるCEACAMファミリーを解析して、同疾患の予後予測マーカーの可能性を免疫組織学的解析により検討した。その結果、CEACAM1とCEACAM6が本疾患の進展・予後に相関する傾向があることを見いだした。興味深いことに、CEACAM1発現を欠失した症例では肺転移を合併する傾向を示したのは逆に、CEACAM6を高発現している症例は、肝芽腫病期分類PRETEXT (Pre-Treatment Extent of Disease)が進行している場合が多かった(stage III-IV)。またCEACAM6高発現4例中3例が肺転移を合併しており、CEACAM6発現レベルは、肝芽腫の転移能獲得に何らかのメカニズムを介して関与している可能性が示唆された。以上の解析結果から、がん病巣におけるCEACAM1とCEACAM6を組み合わせた解析が、精度の高い予後予測マーカーの確立の一助になりうることが示唆された。
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