研究課題/領域番号 |
24592698
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
宗崎 良太 九州大学, 大学病院, 助教 (10403990)
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研究分担者 |
木下 義晶 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80345529)
田口 智章 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20197247)
孝橋 賢一 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10529879)
三好 きな 九州大学, 大学病院, その他 (20621709)
田尻 達郎 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80304806)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 神経芽腫 / 分子標的治療 |
研究概要 |
大量化学療法が用いられている現在でも、進行神経芽腫の予後は不良で5年生存率が30-40%と報告されている。今回我々は、小児の髄芽腫、成人の消化器癌、基底細胞癌など種々の発癌に関与することが知られ、さらに分子標的治療薬としても注目されているHedgehog(Hh)シグナル伝達系が神経芽腫においても活性化していることから、神経芽腫発生モデルであるMYCNトランスジェニックマウスを用いて神経芽腫における新規分子標的治療薬の開発を目標に研究を行う。 Hhシグナル伝達経路は,もともとショウジョウバエの研究から明らかとなったシグナル伝達経路で,ショウジョウバエの胚発生における前後決定にかかわるsegment polarity gene と考えられている。現在、ヒトにおいて、Hhシグナルは神経、消化管、肢芽等の形成に関与し、また、その異常で小児の髄芽腫、成人の消化器癌、基底細胞癌など種々の発癌に関与することが知られている。また、このことから、髄芽腫・基底細胞癌に対する分子標的治療薬としての開発も進んでおり、実際、髄芽腫の全身転移の患者に、Hhシグナル阻害剤を経口投与し、一時的にではあるが、著名な腫瘍の縮小を認めた症例も報告もされている。 一方、進行神経芽腫の治療成績は、大量化学療法が用いられている現在でも、予後不良である。それらの症例に対して新たな治療法の開発が期待されているが有用な報告はほとんどない。そこで、我々は、Hhシグナルが神経芽腫の新規治療になりうるのではないかと考え、本研究を開始した。神経芽腫の臨床検体におけるHhシグナルの活性化の有無を調べたところ、神経芽腫でHhシグナルが活性化していることを発見し、Hhシグナルが神経芽腫に対する分子標的治療薬となりうると考え、研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近年、神経芽腫のモデルマウスとして、MYCNトランスジェニックマウスが開発され、このマウスは特異的発現するTyrosine Hydroxylaseのプロモーターの下流にヒトのMYCN cDNAが位置するベクターが導入されたもので、神経堤細胞においてMYCN蛋白が強発現することにより右の写真のように胸腹部交感神経節由来の神経芽腫が発生する。また、このマウスに発生する神経芽腫において、ヒトの神経芽腫において生じる染色体変化と多くの同じ変化が対応するマウス染色体に生じており(W.A.Weiss, Cancer Res. 2000)、ヒトの神経芽腫の発生、進展のメカニズムの解明及び、治療開発モデルとして非常に有用であることが報告されている。 現在、当研究室でもMYCNトランスジェニックマウスを飼育しており、ホモ、ヘテロでの神経芽腫の発症率など、検討を行っている。また、MYCNトランスジェニックマウスで自然発症した神経芽腫の検体を集め、そのHh signal経路の中で重要とされているHh蛋白(Sonic Hh, Indian Hh, Desert Hh), Patched(Ptch1,Ptch2), Gli(Gli1,Gli2,Gli3)の抗体を用い、タンパク発現を検討している。また、mRNA発現の検討を行っており、結果を検討している。 MYCNトランスジェニックマウスのHhシグナルの活性化の状態を確認が終了次第、次の実験へ進む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Hedgehog系路の遮断による腫瘍増殖抑制効果の検討を行っていく予定である。 Hhシグナル経路について説明すると、Hh蛋白は分泌蛋白でN末端にパルミトイル酸が結合して活性型となり、標的細胞表面のレセプターであるPatched(Ptch)に結合しこれを不活化し、Smoothened(Smo)に対する抑制が解除される。これによりSmoの下流の転写因子であるGliファミリー(Gli1-3)が活性化し標的遺伝子の転写が起こり、癌化が誘導されることが知られている。現在、分子標的治療薬として開発されているものとしては、Smoを抑制するCyclopamineやGliを直接抑制するものなどが報告されている。今後、マウスに分子標的治療薬としてCyclopamineを投与し、神経芽腫に対する分子標的治療薬としてのHhシグナルの有用性について検討していく。 今後の研究の進め方としては、①MYCNトランスジェニックマウスにCyclopamine投与濃度の決定。②コントロールと比較しての、生存率や腫瘍体積、腫瘍重量での比較。③コントロールとの病理学的比較④コントロールとHh関連蛋白・mRNAの発現を比較し、シグナル抑制による抗腫瘍効果を確認する、という予定で考えており、現在まで特に予定通りの進行具合である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の予定としては、①MYCNトランスジェニックマウスにCyclopamine投与濃度の決定。②コントロールと比較しての、生存率や腫瘍体積、腫瘍重量での比較。③コントロールとの病理学的比較。④コントロールとHh関連蛋白・mRNAの発現を比較し、シグナル抑制による抗腫瘍効果を確認する、といったことを考えている。 必要な経費としては、MYCNトランスジェニックマウスの飼育料、Cyclopamine、免疫染色やPCRの試薬が少なくとも必要である。
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