研究課題/領域番号 |
24592700
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
下島 直樹 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (30317151)
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研究分担者 |
黒田 達夫 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (60170130)
芝田 晋介 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (70407089)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ヒルシュスプルング病 / ヒルシュスプルング病類縁疾患 / 腸管神経 / 腸管グリア / 神経堤幹細胞 / 再生医療 / 次世代シーケンサー / 網羅的遺伝子解析 |
研究概要 |
【臨床検体におけるタンパク発現の解析】 ヒルシュスプルング病類縁疾患の一つであるhypoganglionosisの病態解明を目的として、以下のような仮説を立てて臨床検体を用いた研究を行った。 仮説1:腸管神経の起源である神経堤由来の幹細胞、前駆細胞が神経とグリアに分化していく過程に異常があるためhypoganglionosisになる。 仮説2:腸管神経のうち、ある種のサブタイプ(特にNO作動性神経)のみが減少した結果、hypogagnlionosisになる。 小児外科で手術により腸管切除を受けた患者11例(hypoganglionosis6例、正常コントロール5例)の検体を用いて免疫染色による評価を行った。神経とグリアの比率は、hypoganglionosisにおいて有意にグリアが少ないという結果を得た。グリアはもともと神経の支持細胞であるが、同時に栄養因子を供給していることも分かっており、hypoganglionosisの病因にグリアが関与している可能性が示唆された。一方、神経のサブタイプの解析では、NO作動性神経の分布に2群間での差は認められなかった。 これまでhypoganglionosisはその患者数の少なさゆえに原因については全く分かっていない。形態学的には神経の数が少なく、未熟であることから神経の異常と考えられているが、今回の解析結果はむしろ神経の栄養供給源であるグリアが病因を担っている可能性を示唆しており、これまでにない新しい病因論を展開できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の目的には、ヒルシュスプルング病および類縁疾患の原因を遺伝子レベルで解析するということを掲げているが、まだ遺伝子レベルでの解析は進んでいない。これについては患者さんから得られた血液よりホールゲノムを採取したうえで、次世代シーケンサーを用いての網羅的遺伝子解析にかけることを考えていたが、検体数が少ないことと費用の高さから今年度は見送った。 また、正常およびhypoganglionosisの腸管より分離、同定された神経堤幹細胞の自己増殖能、多分化能の検討については、期間中に数例に対して行っているが、培養中の感染などによって細胞の多くが死んでしまい、十分な結果が出ていない。これについてはプロトコルの見直しを含めて、対策を考えていく。
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今後の研究の推進方策 |
【臨床検体を用いた研究】 前年度得られた成果である、hypoganglionosisにおける神経とグリアの比率の変化についてさらに検討を加えたい。具体的には、前年度もちいた神経マーカーおよびグリアマーカーがそれぞれ神経繊維やグリア細胞の細胞質を染める抗体による評価であったため、定量的な評価には向いていなかった。そこで、今年度は症例数を増やしたうえで、神経およびグリアの核を染める抗体によって染色を行い、より客観性、信頼性にすぐれた方法で評価を行う。また、電顕を用いての微細構造についても正常とhypoganglionosisで異なるかどうかの検討を加えていきたい。 【遺伝子解析】 症例数が増えてきたこと、次世代シーケンサーを用いた網羅的遺伝子解析の費用も下がってきていることから、今年度中に解析を行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記研究を遂行するために必要な抗体や試薬の購入、および次世代シーケンサーによる網羅的遺伝子解析のために費用を充てる予定としている。 また、研究結果の報告を学会において発表するため、その学会関連費用にも充てる予定である。 前年度、未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品購入に充てる予定である。
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