研究課題/領域番号 |
24592709
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
岡崎 睦 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50311618)
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研究分担者 |
森 弘樹 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (80345305)
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キーワード | 組織移植 / 筋組織 / 脂肪組織 / 血流評価 / 体積変化 / 虚血 / うっ血 / 放射線照射 |
研究概要 |
本研究では、ラットを用いて、虚血や鬱血、放射線照射など様々なストレスを付加し、移植組織の血流と体積の変化を経時的に測定することを目的としている。 平成24年度には動物モデルとしてSDラットを用いた広背筋移植モデルを確立し、手術操作中に同定された筋組織を支配する神経や血管に切断やクリッピングなどの条件を付加することが可能となった。測定法に関してはmicro focus X線CTを用いた最適条件での軟部組織撮影法と、得られたCT画像からの移植組織の体積算出の手技が確立された。 平成25年度は、様々なストレス下での移植筋組織体積の長期的な経時変化を測定するべく実験を重ねた。筋組織の体積変化に関しては、移植術後1週間ではわずかな体積増加がみられるが術後8週間の経過で体積は約10%程度にまで減少するという結果が得られ、学会報告した。 しかしその後の過程でいくつかの問題点が明らかとなった。本来CT装置は軟部組織の観察には適さず筋組織を周囲組織と明瞭に識別することは困難であった。そのため周囲との血流再開を妨げない人工識別材数種類について使用・検討していたが、経過観察中に高率に感染を併発することが明らかとなった。そのため人工物の代替として自家組織による組織識別の手技の開発に移り、遊離脂肪を用いる方法を実施・検討中である。脂肪組織移植に関する動物モデルとしては、皮下脂肪組織が豊富なZucker肥満ラットを用いて、浅下腹壁動静脈を血管茎とした下腹部脂肪弁を挙上する手技を確立した。ただし、このラットが非常に高率に術後創部への噛みつき行動をとるという特徴が明らかになった。これにより術後1週間で移植脂肪組織が消失してしまうため、対応策を考案中である。今後は様々なストレス下での移植脂肪組織の体積変化の正確な定量という点に絞って実験を継続していく予定である。この研究は文献的な報告が非常に少ない分野である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
画像撮影と体積測定の手技に関してはおおむね計画通りに進んでいる。遅れている理由について、これはまず以下に述べる要素が大きい。当研究室では全ての実験を大学の動物実験センター内で行っているが、平成25年度は施設の老朽化に対する大規模な改修工事期間となり通常の施設の利用ができず、仮設動物実験施設でしか実験できなかった。動物飼育施設や実験室の移動、それによる中断などがあり、さらに放射線照射施設は一切の使用ができなくなった。これらのハード面での問題から当初予定していた実験の進行が得られなかった。これに関してはまた、仮設動物実験施設の使用料は、1匹・1日あたり想定していた通常の餌・管理料の10倍近い料金が請求されており、実験の進行が思うように進まないわりに、経費が予想以上にかかった。 また、初年度に達成したと考えていた動物実験モデルの確立に様々な問題が生じ、最適化のために予想以上の時間が必要となっているのが現状である。また動物に加えるストレスのもうひとつの重要な柱である、放射線照射の手技の確立および照射条件の最適化に関しても遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今年7月には、新しい動物実験施設がオープンする見込みである。 今後はZucker肥満ラットの浅下腹壁動静脈を血管茎とした下腹部脂肪弁を用いた移植脂肪組織の体積変化の長期測定を中心に、研究を進めていきたいと考えている。さらに新しい工夫として、ラット個体間による差や成長とともに変化する体積量の誤差を補正するために、同一個体の両側に挙上した脂肪組織にそれぞれ違ったストレスをかけその差異を測定する方法を考えている。 本学の動物実験センターの改修工事の終了により、平成26年夏頃より放射線照射装置が再稼働する予定である。そのため放射線照射ストレスに関する実験も積極的に進めていきたいと考えている。またセンターの再稼働に伴い新しいCT装置が導入される予定である。この装置によりラットのCT画像をより高速に簡便に撮影でき体積測定も専用のソフトが導入されるため実験の推進に有利な条件が整うわけだが、現在までの測定方法と異なる手順を取らざるを得なくなるためそこで生じる誤差を最小限にする配慮が必要となるため、検討中である。 組織血流の評価に関しては前述のような理由により実験計画期間内でのnano SPECT/CT撮影は難しいと考えている。その代替手段として、より簡便に測定できるレーザー組織血流計の導入を検討中である。この導入には、同施設の別の研究者の他の研究資金により購入予定となっているので、それを使用することが可能になる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当研究室では全ての実験を大学の動物実験センター内で行っているが、平成25年度は本学動物実験センター施設の老朽化に対する大規模な改修工事期間となり通常の施設の利用ができず、仮設動物実験施設でしか実験できなかった。動物飼育施設や実験室の移動、それによる中断などがあり、さらに放射線照射施設は一切の使用ができなくなった。これらのハード面での問題から当初予定していた実験の進行が得られなかった。これに関してはまた、1匹・1日あたり想定していた通常の餌・管理料の10倍近い料金が請求されており、経費が予想以上にかかることが明らかになった。以上より、研究の進度・規模を縮小して、今年度に実験の比重を置くことにしたため。 前年度に進度・規模を縮小した分の後方移動のため、使用計画全体としては、大きな変化がない。消耗品を中心に、予定通り研究を行う予定である。
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