研究実績の概要 |
皮下脂肪組織が豊富なZuckerラットを用い、浅下腹壁動静脈を血管茎とした脂肪弁の体積変化を経時的に測定した。ラットの個体差や成長による体積変化を補正するため、同一個体の両側で脂肪弁を挙上し、それぞれ血管負荷群、対照群とした。血管への負荷は臨床を想定して、虚血・鬱血ともに3時間(血管にクリッピング)とした。 組織血流の評価に関しては、動物実験センター改修工事の影響でnano SPECT/CTによる評価ができなかったため免疫組織学的手法を用いた。ラットから移植脂肪組織の検体を採取し、血管茎からみて近位,中間位,遠位それぞれから得た組織切片を用いて、脂肪細胞をペリリピンで毛細血管をイソレクチンで染色することにより脂肪細胞数と毛細血管数を測定し毛細血管密度を算出し、この毛細血管密度と移植脂肪組織の体積変化率の相関を検討した。 結果、移植された脂肪組織は術後6~10週の経過で体積が減少しその後はほぼ一定かやや増加することが分かった。対照群の12週の体積変化は平均35%、ストレス群の体積変化は13%であり、血管にストレスを与えた群が体積減少が大きかった。同一個体でのストレス群/対照群の測定値をみると、虚血群では70±78%であるのに対して、鬱血群では38±22%であった。体積変化の平均値には有意差がみられなかったが、ばらつきには有意差がみられた。脂肪組織中の毛細血管密度の検討では、脂肪細胞数や毛細血管数が体積変化率と相関を示さなかったのに対して、毛細血管密度は体積変化率と有意な相関を示した。脂肪組織の部位別にみると、近位や中間位では相関を示さなかったが、遠位での毛細血管密度と体積変化率は相関関係を示した。同一個体での脂肪体積と毛細血管密度のストレス群/対照群の測定値を比較すると有意な相関がみられた。得られた研究成果は、英語学術雑誌への投稿中である。また2015/10に開催される日本形成外科学会基礎学術集会で報告する予定である。
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