研究課題/領域番号 |
24592712
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
一瀬 晃洋 神戸大学, 医学部附属病院, 准教授 (90362780)
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研究分担者 |
松山 晃文 公益財団法人先端医療振興財団, その他部局等, 研究員 (10423170)
柿崎 裕彦 愛知医科大学, 医学部, 教授 (20329783)
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キーワード | 再生医療 / 平滑筋 |
研究概要 |
平成25年度は、平成24年度までの成果であったヒト脂肪組織由来多系統前駆細胞(ADMP細胞)の分離・培養技術およびその平滑筋への分化誘導によって得られた細胞による、動物への移植・生着を目指して研究を進めた。 まず行った予備的検討実験においては、移植細胞の生着は見られなかった。原因として、移植手技の問題と移植細胞の数および質の問題が可能性として考えられたが、動物愛護の立場から動物実験を最小限にするため、後者についてまず検討を進める方針とした。その結果、平成24年度までに行った手法では、得られるADMP細胞由来平滑筋細胞の数は安定せず、Real time-PCRやWestern blotによる分化マーカー遺伝子発現の定量的評価においても、その安定性が不十分であることがわかった。 そこで、ADMP細胞由来平滑筋前駆細胞の質の向上および得られる細胞数の増大を目指して、ADMP細胞の分離・培養および分化誘導の各プロセスについての最適化の検討を行った。具体的には、EDTA処理時間や機械的操作の細部、分化誘導培地などの検討を行った。その結果、ADMP細胞由来平滑筋前駆細胞の数、質ともに、安定して得られるようになった。 今後は、この細胞を用いてラットあるいはラビットへの移植実験を進め、in vivoでの生着および平滑筋分化の有無あるいはその程度を、免疫組織学的に評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト脂肪組織由来多系統前駆細胞(ADMP細胞)の分離・培養および平滑筋前駆細胞への分化誘導の各プロセスについての最適化を行い、量および質の面で安定して目的の細胞を得られるようになった。 当初予定では、25年度中に動物実験を進めることとしていたが、予備的検討で十分な生着が得られなかった。しかし、これは、研究開始当初から「研究が当初計画どおりに進まない時の対策について」としてその可能性を想定していた範囲内のことであり、その時点からすでに立案していた対策に沿う形で研究を進めることができており、今後の研究の継続によって最終的には当初の目的を達成し得ることが見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
①平滑筋前駆細胞の作成:25年度までに得られた成果を元に、ADMP細胞由来平滑筋前駆細胞を作成する ②平滑筋前駆細胞の動物の上眼瞼への注入:免疫抑制剤投与を事前投与したラットあるいはラビットに、作成した平滑筋前駆細胞を上眼瞼の結膜下へ30G針を用いて注入する。平滑筋前駆細胞は、平滑筋の近傍に注入することにより、平滑筋への分化が促進されるが、ミュラー筋は上眼瞼結膜直下に存在するために、平滑筋前駆細胞を当該筋内および近傍に正確に注入可能である。 ③平滑筋の分化・生着の検討:細胞移植後4週後及び16週後に犠牲死せしめ、上眼瞼の組織学的検討を行い平滑筋(ミュラー筋)の構築を評価する。免疫学的検討として、平滑筋細胞に対する抗体としては抗α-smooth muscle actin抗体、抗Transgelin1抗体、抗Calponin1抗体などを、ヒト由来の細胞であることの証明としては抗CD90抗体などを用い、移植部位細胞の免疫組織学的検索から平滑筋細胞へと分化・生着しているか否かを確認する。 ④採取・培養・注入条件の最適化の検討:得られた平滑筋の組織構築の結果をフィードバックし、培養・注入条件の更なる最適化について検討する。注入条件の最適化には、注入する平滑筋前駆細胞と眼瞼の平滑筋(ミュラー筋)との関連性が重要であるため、ミュラー筋および周囲の解剖学的研究を必要に応じて行う。柿崎は、眼科領域で特に眼瞼の解剖に詳しく、機能面を含めた集学的な検討を行う。検討により得られた採取・培養・注入条件に基づき上記の実験を繰り返し行い、データを集積して平滑筋の再生法の最適化を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた動物実験が予備的検討を行うにとどまったために、実験動物使用および動物飼育にかかる費用の支出が小さくなったことが主な理由である。 実験動物およびその飼育費用、ADMP細胞の分離、培養、平滑筋分化細胞への分化誘導に関連する試薬類に対する使用を計画している。
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