研究課題/領域番号 |
24592713
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
徳山 英二郎 岡山大学, 大学病院, 医員 (90379785)
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研究分担者 |
成瀬 恵治 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (40252233)
高橋 賢 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (50432258)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 再生医学 |
研究概要 |
今年度は、まず自己集合性ペプチドゲルを用いた全層培養皮膚の作成を試みた。皮膚線維芽細胞をゲルと混合し作成した専用のシリコン製培養器内で三次元培養を行ったが、1週間ほど培養するとゲルが脆くなり伸展刺激を加えるのが困難となってしまう問題が発生した。細胞やゲルの濃度を変えながら培養を繰り返したが、この問題が解決できなかったため、scaffoldとしてI型コラーゲンゲルを用いる方法に変更した。コラーゲンゲルを用いることで強度が安定し、ここにヒト表皮角化細胞を播種、角化させることで、3次元全層培養皮膚のストレッチシステムを完成させることに成功した。また、これと同時に培養器も改良し、2倍以上の大きさの培養皮膚の作成が可能となった。このシステムを用いてストレッチ刺激を加えた(ST)群と加えていない(NST)群に分け、切片を作成しHE染色を行ったところ、有意にST群で表皮角化層の厚みが増している所見が認められた。全層培養皮膚における表皮角化細胞の分化増殖には基底膜構造の良否が大きく関わっているとの報告が多くあり、基底膜の代表的な構成蛋白であるType IV/VII collagenおよびLaminin 5の蛍光免疫染色を行った。その結果、ST群でのType IV collagenおよびLaminin 5の蛍光強度がNST群に比して有意に増加している事が分かった。更に、Western blottingでも、ST群でType IV collagenがNST群に比べ有意に増加している結果が得られた。また、透過型電子顕微鏡での基底膜構造を観察したところ、ST群ではLamina densaやLamina lucida様の構造が不完全ながら認められた。これらの結果より、3次元培養皮膚に伸展刺激を加えることで、基底膜構成蛋白の生成、及び表皮角化細胞の分化増殖が促進されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自己集合性ペプチドゲルを用いて3次元全層培養皮膚を作成するという当初の目的の1つは達成できなかったが、コラーゲンゲルを用いることで、世界で初となる3次元全層皮膚のストレッチシステムを完成させることができた。また、従来の単一細胞での2次元ストレッチ培養法では不可能であった、皮膚線維芽細胞と表皮角化細胞の境界に存在する基底膜にストレッチ刺激が及ぼす影響を解析することが可能となり、より、in vivoに近い条件での実験が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
Type VII collagen及びLaminin 5に関してもWestern blottingを用いた定量的解析を行う。また、2つの異なる細胞間のinteractionにストレッチ刺激がどのように影響を与えているかを、培地中のサイトカイン濃度をELISA法などで解析する予定である。 更に、これらをストレッチ刺激の条件を変えながら実験を行い、3次元培養皮膚を作成する上で最適なストレッチ条件を明らかにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
主にWestern blottingやELISAに必要な各種抗体、及び培養皮膚作成に必要な細胞、専用培地の購入に用いる。また、2013年11月7日に開催される第22回日本形成外科学会基礎学術集会(新潟)に参加予定であり、その旅費も計上する予定である。
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