研究課題/領域番号 |
24592714
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
小阪 淳 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (40243216)
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研究分担者 |
木股 敬裕 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50392345)
若林 毅俊 関西医科大学, 医学部, 准教授 (90302421)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | マイクロサージェリー |
研究概要 |
初年度は、当初の研究実施計画に基づき研究を行った。 (1)まず、ラット視神経を切断した。移植片として、より外径の大きな坐骨神経を栄養血管である大腿動静脈柄付き、及び皮弁を合併した形で剥離し、これを手術用顕微鏡下で視神経切断端に吻合した。さらに大腿動脈は外頚動脈に、大腿静脈は外頚静脈に吻合した。1ヵ月後移植片に、granular blueをラベルし、移植片に視神経軸索を伸長している網膜神経節細胞を同定した。現在、例数を増やして再生細胞の定量化を進めている。 (2)再生細胞を同定するだけでなく、生存細胞を同定するためにC38抗体により網膜神経節細胞の標識を行った。血管柄つきの末梢神経移植後のラット網膜でも、再生軸索を持たない生存細胞が同定できることが判明し、こちらも現在定量化を進めている。 (3)血管柄付き移植を施した末梢神経片を電子顕微鏡観察し、髄鞘の形成状態を、“無髄”“未成熟の有髄”“成熟した有髄”と3種類に分けてカウントすることで、髄鞘化の状態を定量化した。さらにχ2乗検定と残差解析を行うことにより、血管柄なし移植片と比較して有意に髄鞘化が進行することを同定できた。 (4)血管柄付き正中神経移植により、再生視神経数の増加と、早期のミエリン化が促進された結果については英文論文にまとめ投稿し、受理された。 (5)血管柄付き正中神経を、ラット眼球の耳側強膜を貫通する形で移植し、1ヵ月後、DiIで標識し軸索再生細胞を同定することを試みている。貫通移植は、眼球内に出血を来たすことが欠点であり、現在、その克服法について検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画調書、交付申請書と全く同じではないが、概ね年次計画通り研究は実施されており、当初の研究の目的に添っている。初年度は、主として条件検討を行い、様々な細かい改善点が明らかになったので、次年度はそれらの成果を踏まえて、より確実に研究を遂行していく計画である。臨床応用可能な高度な中枢神経機能の再建を目指すという研究の目的に、ゆっくりではあるが確実に近づいている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通りに、研究を推進する。初年度の研究成果、研究経過を受けて次年度以降はretinotpyの再構築を目指す。耳側の強膜を貫通させて刺入した血管柄付き末梢神経移植の手術法の確立と、その軸索再生細胞の評価法を確立する。さらに、鼻側にもう一本の血管柄付き末梢神経移植を同時に行い、網膜内における視神経再生細胞の偏在を調査する。 本年度は、さらに加えて、Lewis ratを用いた、他家移植と、18ヶ月齢の老齢ラットを用いた血管柄付き末梢神経移植を行う。 視神経切断における網膜神経節細胞の細胞死に際しては、細胞死促進因子であるHrk、BimELの発現が上昇することが確かめられている。そこで形態学的な解析に加えて、これら分子の発現変化をrealtime RT-PCR解析と、in situ hybridizationのシグナル強度の細胞レベルの定量化法を用いて、それぞれの遺伝子のmRNAのcopy数を定量化していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度も初年度と同様に、綿密な研究費の使用計画を立案し、無駄な支出のない効率的で適正な研究費使用に心がけていく。研究の効率化のため、正立顕微鏡に接続する水銀蛍光光源の設置を計画中である。岡山大学動物資源部門においての実験動物の維持・飼養と、手術法の検討が研究の根幹をなすため、飼育料金ならびに手術用の実験室の利用料金負担を、本科研費より支出する。 研究課題に関わる研究成果を著した論文の受理が遅れ、次年度にずれ込んだため(平成25年4月18日受理)、論文のページチャージ代、カラーページ代、別刷り代の支払いが次年度以降にずれ込むことになった。そのために、初年度は、これらの費用を取り置いておく必要が生じ、次年度以降に使用する予定の研究費が発生した。
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