研究実績の概要 |
難治性創傷の重要な原因の一つとして、創傷治癒機転の異常が挙げられる。遷延性炎症期が続き,正常の治癒機転が働かず難治性になることはよく知られている。最近、低分子RNAであるmicroRNA (miRNA)が様々な疾患に関与することが次々と明らかになってきた。最近、我々は糖尿病性創傷においてのmiR-21調節が正常とは異なり、創傷治癒期に著しい発現低下が認められることを明らかにした。幾つかの疾患の病態生理においてmiR-21とTGFβ1の間の相互作用が報告されている。しかし,糖尿病性創傷を含む難治性創傷におけるmiR-21とTGFβ1間の相互作用と創傷治癒機転の異常との関連は未知である。本研究は、糖尿病性創傷においてmiR-21 とTGFβファミリーの相互作用を明らかにし,糖尿病性創傷治癒に対しmiR-21 の潜在的役割を評価することにした。マウス繊維芽細胞を用いての実験により、高糖条件でのmiR-21の発現を調べたところ、TGFβ1によるmiR-21(primary, precursor, mature段階での)発現増加が見られた。NFkBがTGFβ1による活性化され、細胞内ROS活性を起しmiR-21の発現を誘導することが明らかになった。さらに,TGFβ1刺激によりNFkBp65がmiR-21遺伝子に結合することがCHIP法により確認された。NFkB活性化を介してSMAD2,3,4がPri-miR-21と結合されることがRNA-IP(RNA-免疫沈澱)法により検討された。 正常マウスおよび糖尿病性マウスの皮膚から得られた線維芽細胞を用いてのin vitro実験により糖尿病性マウスから得られた繊維芽細胞においてのmiR-21遺伝子が下方制御されていることが確認された。MiR-21が細胞遊走に重要であることもwound scratch assay法により確認された。
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