研究課題/領域番号 |
24592725
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研究機関 | 静岡県立静岡がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
井上 啓太 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, その他 (80618520)
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研究分担者 |
秋山 靖人 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, その他 (70222552)
中川 雅裕 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, その他 (00285793)
清原 祥夫 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, その他 (70205037)
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キーワード | 免疫療法 / 遊離皮弁 / 樹状細胞 / 形成外科 |
研究概要 |
本研究の目的は、遊離皮弁に免疫学的に抗腫瘍効果を付加して腫瘍の増大を制御する治療法(免疫皮弁)の開発である。抗腫瘍効果は、腫瘍細胞由来抗原により免疫した樹状細胞の局注により付加する。24年度までにマウスの動物モデルを中止し、ラットの動物モデルの確立を行ってきた。また、ラット樹状細胞の採取およびラット扁平上皮がん細胞の移植法も確立した。 25年度前半は、当初は遊離皮弁をラットで作成し、経動脈的に樹状細胞の注入を行おうとしたが困難であるため、より簡便な形のモデルに変更した。具体的には皮弁を有茎皮弁として挙上し、樹状細胞は動脈内ではなく皮弁内に局所注射するモデルとした。この方針により、安定して動物モデルを作成できるようになった。ラットの有茎皮弁を作成し下腹部に移動し、同時にマトリジェルに混合したラット扁平上皮細胞を局所に移植するモデルを、コントロール群および、樹状細胞局注群に分けて作成した。3週間後の腫瘍体積の変化、細胞障害性Tリンパ球の活性(CTL活性)を測定した。コントロール群では一般に腫瘍体積は2週間で直径1cm程度に増大し、局在は皮下である。また、皮弁にはそけい脂肪内のリンパ節を1-2個含めることが可能であり、コントロール群では皮弁内リンパ節にも転移が認められた。コントロール群と樹状細胞移植群の比較を1年間にわたり数回試みたが、腫瘍細胞の生着にバラツキがあるためか、3週間後の腫瘍体積にもばらつきが生じることが判明した。このため未だ腫瘍体積、CTL活性においてコントロール群との有意差は見出すことができないでいる。 25年度後半から、腫瘍細胞の生着数を安定化させるため、皮弁移植部に予め大きめのポケットを作成して、このポケット内に腫瘍細胞を包み込むように改善しモデルを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
腫瘍細胞の生着にバラツキがあることが判明するまでに時間がかかった。24年度までに移植数の最適化はおこなっていたが、皮弁モデルと異なる方法での移植であったため、実際に皮弁モデルの作成をはじめてからこの問題に直面した。移植細胞数の最適化は皮弁モデルで行うべきであったと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
腫瘍細胞生着に関する問題に対しては既に対策を講じており、26年度は改善した動物モデルでの対照試験を繰り返しおこなうことで、抗腫瘍効果を明らかにできると考えられる。従って、研究計画の変更は特にない。今後は、より臨床に近い形での実験を行うため、現在の有茎皮弁モデルを遊離皮弁モデルに発展させること、および、樹状細胞の投与経路を局所注射から動脈注射に発展させることなどを予定している。その過程で生じると予想される課題は、①遊離皮弁のモデルの成功率を上昇させること、そのための手技の安定化②樹状細胞の動脈注射の最適化(細胞数、注射液の組成、カニュレーション手技)などである。これらにについては、ラットでの遊離皮弁作成に実績のある研究者からの協力などを予定している。 また、順調に基礎的研究が揃った場合、臨床応用への準備として遊離皮弁再建症例が豊富な大学病院との議論を開始する。具体的には、乳房再建症例が豊富な大学病院の形成外科医と連携し、ミニブタなど、中大動物での安全性試験実施の可能性、さらには第1相試験のプロトコールの策定、実施について検討を始める。
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次年度の研究費の使用計画 |
ラット動物モデルの再検討に時間がかかったため、作成数が予定より少なかった。このため、ラット購入費が予定より少額となった。 次年度仕様額は26年度に行うラット動物実験において使用する予定である。
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