研究課題
重症敗血症・敗血症性ショックは、心不全を含めて重篤な多臓器不全を惹起する。全身のインスリン抵抗性を生じ、インスリン投与による血糖管理も重要な治療となっている。Fatty acid binding protein 4 (FABP4)とFABP5のダブルノックアウトマウス(DKOマウス)は、血管内皮細胞の脂肪酸輸送が障害されるマウスモデルで、インスリン非依存的に心筋のグルコース代謝が代償的に著明に亢進する(野生型の約20倍)。本研究では、インスリンの作用とは独立して、血管内皮細胞の脂肪酸輸送障害により生じた心筋へのグルコース摂取と利用能の亢進が、敗血症モデルにおいて心機能の改善・生命予後の改善に貢献するか否か、を検証した。急性の敗血症を惹起するリポポリサッカライド(LPS, 10 mg/kg)を腹腔内に注射すると、12時間後にDKOマウスの心収縮がFS 33%(野生型43%)と有意に低下した。血圧・脈拍の低下レベルは同様であった。125I-BMIPP(脂肪酸アナログ)の心臓の取り込みが、野生型マウスのLPS群で30%低下し、DKOマウスのLPS群で50%低下した。18F-FDG(グルコースアナログ)の取り込みは、野生型で約2倍増加したが、もともと増加していたDKOマウスの取り込みは約20%低下した。心臓に貯蔵される中性脂肪やグリコーゲンは、野生型・DKOマウスともに著明に増加した。血中のサイトカインレベル(TNF-a, IL-6, MCP-1)は2群間で差異は認められなかった。以上より、野生型とDKOのいずれのマウスでも、LPS処置下では、エネルギー代謝(異化)が著明に阻害され、異化されないエネルギー基質が心筋に蓄積されるものと推察された。グルコース取り込みが亢進するDKOマウスの心臓でも、取り込まれたグルコースはエネルギー産生にほとんど利用されないことから、グルコース取り込みを亢進する治療だけでは、心機能は改善しないことが明らかとなった。
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