研究課題/領域番号 |
24592735
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
清水 裕子 岡山大学, 医学部, 客員研究員 (80423284)
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研究分担者 |
森田 潔 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (40108171)
高橋 徹 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (40252952)
森松 博史 岡山大学, 大学病院, 講師 (30379797)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 集中治療医学 / 急性肝傷害 / 酸化ストレス / Nrf2 / オートファジー / ヘムオキシゲナーゼ / Bach1 / 四塩化炭素 |
研究概要 |
申請者らはこれまでの研究で、急性臓器不全の細胞障害には酸化ストレスが関与し、細胞保護作用を持つストレス蛋白 Heme Oxygenase(HO)-1や、その発現を抑制的に制御する転写調節因子であるBach1 mRNAが急性肝不全において肝細胞に誘導されることを報告してきた。最近、活性酸素などの酸化ストレスにより活性化される転写因子Nrf2は、Bach1と相互作用しHO-1などの抗酸化タンパク質遺伝子の発現を強力に活性化するとともに、タンパク分解経路の一つであるオートファージー(自食作用)にも関与し細胞傷害を制御していることが報告された。本研究では、急性肝不全のより鋭敏で早期に感知できる酸化ストレスマーカーとしてのNrf2の有用性を検討するとともに、肝傷害重症化機序のさらなる解明のため、肝傷害と Nrf2、オートファジーの関係をin vivo、in vitroさらにはヒト肝不全症例において明らかにする。 H24年度は、肝不全においてNrf2が酸化ストレスマーカーとして使えるかNrf2の発現動態をまず明らかにする。 四塩化炭素(CCl4)暴露ラット劇症肝炎モデルでは、CCl4由来の酸化ストレスによりヘムタンパクであるチトクロームp450が崩壊し、遊離ヘムの増加をBach1が感知することによりNrf2がKeap1から離れMARE配列に結合しHO-1が誘導されると考えられる。そこで、ラットCCl4肝傷害モデルにおいて、CCl4容量依存的、また経時的にNrf2発現動態を遺伝子レベルで検討した。CCl4をラットに0.1~2.0 ml/kg body weight投与し容量依存的にNrf2 mRNAの発現が増加した。また、Nrf2 mRNAはCCl4投与後3-6時間をピークとして肝に誘動された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H24年度は、CCl4暴露ラット劇症肝炎モデルにおける肝のNrf2の誘動を検討したが、遺伝子レベルの実験はほぼ終了し、現在たんぱくレベルでの発現を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度は、CCl4暴露ラット劇症肝炎モデルにおける肝のNrf2の発現をタンパクレベルでの検討を続ける。 さらに、肝傷害重症化の機序を明らかにする目的で肝傷害の程度とオートファジーの関与を検討する。 臓器傷害の重症化とオートファジーの関係を調べるために、オートファジーをモニターできるオートファゴソーム蛍光標識マウス(GFP-LC3#53)にCCl4投与しオートファジーの有無を組織学的に検討。更に重症肝傷害モデルを作成するために、p450を強誘導するフェノバルビタール(PB)や、細胞保護作用を持つheme oxygenase(HO)を拮抗阻害するスズメゾポルフィリン(SnMP)を前投与したCCl4投与GFP-LC3マウスモデルにおいて、肝傷害の程度とNrf2、オートファジーの関係を遺伝子レベル、タンパクレベルで検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度に完了予定だったCCl4暴露ラット劇症肝炎モデルにおける肝のNrf2のタンパクレベルの実験がやや遅延しているため、購入予定だったWestern blotのための試薬がH24年度内に購入に到らずH25年度への繰越金が生じた。H25年度はまずタンパクレベルの解析を継続し、これにはH24年度からの繰越金を充当する。 オートファゴソーム蛍光標識マウス(GFP-LC3#53)を用い、CCl4投与群、PB前投与+CCl4投与群、SnMP前投与+CCl4投与群、vehicle群各群10匹ずつ以下の検討をおこなう。 1. 肝傷害重症化とオートファジーの関与を組織学的(蛍光顕微鏡、電子顕微鏡)に証明する。 2. Western blot法にてNrf2、Keap1、p62の動態とオートファジーのモニタリング抗体LC3-I, IIを定量的に検討する。 3. また、肝傷害の程度をMDA活性、血清 ALT値、組織学的検討により評価し、オートファジー不全時に過発現するといわれるp62が肝傷害の程度によりいかに変化するかNrf2の発現とともに比較検討する。 以上の実験をおこなうために、遺伝子発現をNorthern blot法で検討するためにtotal RNA抽出試薬、cDNA 標識キットおよび標識用放射性同位元素が必要となる。タンパク定量をWestern blot法で検討するために、ミクロソームおよび核タンパク抽出用試薬、抗体、タンパク検出用試薬が必要となる。蛋白の局在を検討するための免疫染色に、抗体や抗体標識・発色用試薬が必要となる。肝機能評価のための血清ALT値測定のためのキットが必要である。その他、上記の測定に伴う電気泳動用試薬・洗浄用試薬が必要となる。また、MDA活性、MTTアッセイの試薬の必要である。組織学的検討のため透過型電子顕微鏡用のサンプル作成試薬、顕微鏡使用料等が必要となる。
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