研究実績の概要 |
本研究の目的は、本邦の学校における心停止の実態調査および救護活動指針案の提示である。研究者らは大阪府の学校における心停止の発生頻度・予後・疫学的特徴について、大阪府心肺蘇生効果検証委員会のデータを分析した。2005年からの5年間に34例の内因性心停止が大阪府の学校で発生し、11例(33%)が社会復帰した。21例(62%)で既往に心疾患を有する者あるいは運動中・直後に心停止が発生していた。23例(68%)が心室細動であり、学校で心停止が発生した際には配備されたAED(自動体外式除細動器)の早期使用により予後の改善が期待される。これらの結果については英文医学雑誌に発表した(Nishiuchi T., Hayashino Y., Iwami T., Kitamura T., Nishiyama C., Kajino K., Nitta M., Hayashi Y., Hiraide A., Utstein Osaka Project Investigators. Epidemiological characteristics of sudden cardiac arrest in schools. Resuscitation 2014;85:1001-6.)。 心停止の予防と効果的な救護には個人への心肺蘇生教育とAEDの学校への設置に加え、周到な計画(Medical Emergency Response Plan:MERP)が必要である。2014年に発表されたアメリカ心臓協会のscientific statementの内容を検討し、大阪府の学校におけるMERPの策定状況についてアンケートを実施した。1728校中764校(44%)から回答を得た。MERPを策定している学校は64%と約3分の1の学校では心停止時の対応策が図られていない状況にある。また、95%の学校が職員に対するCPR講習会を開催していたが、実際の心停止を想定した実地訓練については約半数の49%が未実施であった。現在、本アンケート調査について論文執筆中であり、同論文において本法におけるMERP策定の課題と案を提示する
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