研究課題/領域番号 |
24592744
|
研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
西尾 健治 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (60254489)
|
キーワード | ADAMTS13 / von Willebrand factor / 敗血症 |
研究概要 |
ADAMTS13ノックアウトマウスおよびワイルドタイプマウスを用いて、盲腸結紮穿刺による腹膜炎敗血症モデル作成を行い、敗血症の程度を比較した。ADAMTS13ノックアウトマウスの方が、炎症がより強く敗血症もより重症であろうという予想に反し、ADAMTS13ノックアウトマウスの方が軽症となった。その解釈をめぐり困惑したため、さらに実験を繰り返すと結果が一定とならず、他のグループが同様の実験を開始しているとの情報もあり、LPSの腹腔内注入による敗血症作成実験に変更した。 腹腔内に注入するLPSの投与量をいろいろと変え、またその結果を判定する時間を数時間後から数日後まで、種々の組み合わせを考え施行している。現在のところ、ADAMTS13ノックアウトマウスがワイルドタイプのマウスに比較して、死亡率やクレアチニンの上昇傾向を認めるものの有意差なく、ADAMTS13ノックアウトの方が炎症がより強いという証拠を、組織にて鋭意検索中である。 また、実臨床における敗血症患者の病態生理形成にADAMTS13が関与しているかどうかを検討するため、von Willebrand因子(VWF)、VWF-propeptide、ADAMTS13などの血中濃度の経時的変化を測定して、サイトカインなどの血中濃度の経時的変化と比較検討した。VWF-propeptideの血中濃度はVWFの血管内皮細胞からの分泌速度をあらわすとも考えられ、VWF-propeptide濃度/ADAMTS13濃度の比はVWF分泌に対するADAMTS13の不足をあらわしており、腎障害の程度と非常によく相関していた。これらのことより、実臨床においてもVWF-ADAMTS13軸は敗血症の病態形成に関与していると考えられ、さらにマウスの敗血症モデルを用い、ADAMTS13が薬剤としての効果を検証する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1.当初作成した盲腸結紮穿刺による腹膜炎敗血症モデルにおいては、ADAMTS13ノックアウトマウスの方が予後が良く、当初の予想に反していたこと。2.結果の解釈に難渋していたこともあり盲腸結紮穿刺モデルを用いた研究を繰り返していたが、他のグループも開始しているとの情報もあり、盲腸結紮穿刺による敗血症作成を中止したこと。3.LPS腹腔内注入によるマウス敗血症作成を新たに開始したこと。4.LPS腹腔内注入によるマウス敗血症の程度が一定とならず、ADAMTS13ノックアウトマウスとワイルドタイプマウスの敗血症の程度の比較をしても、一定の傾向を認めるものの、有意差を見つけられなかったこと。5.結果が一定しなかったため、さらに新たな敗血症の作成を開始したこと。 6.新たな敗血症をLPSの経尾静脈投与にて作成しているが、最適な投与量や適切な敗血症程度の判定時間を決めかねていること。
|
今後の研究の推進方策 |
1.新たな敗血症をLPSの経尾静脈投与にて作成しているが、最も大きな課題は一定な敗血症の作成であるが、程度のばらつきも多く、最適な投与量による適切な敗血症程度を早急に決定したい。 2.そのためには、敗血症の程度の指標として、血液検査のみならず、最も敗血症性DICにおいて変化の現れやすい腎臓に焦点を当て、腎組織の変化をひとつの指標として、一定な敗血症の作成を目指すとともに、ADAMTS13ノックアウトマウスとワイルドタイプマウスの比較も行っていく予定である。 3.一定な敗血症の作成が困難な場合、われわれがすでにその手技に慣れ親しんでいる肝虚血再灌流モデル作成を行い、ADAMTS13ノックアウトマウスとワイルドタイプマウスにおける肝虚血再還流障害の程度を比較したい。ADAMTS13ノックアウトマウスの障害が強ければ、リコンビナントADAMTS13をワイルドタイプマウスに注入し,その抑制効果を検証していきたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初作成した盲腸結紮穿刺による腹膜炎敗血症モデルにおいては、ADAMTS13ノックアウトマウスの方が予後が良く、当初の予想に反していたため、結果の解釈に難渋していたこともあり、盲腸結紮穿刺モデルを用いた研究を繰り返していたため、費用のあまりかからないマウスの研究が続いたことがもっとも大きな理由である。 また、あらたに開始したLPS腹腔内注入によるマウス敗血症作成やLPSの経尾静脈投与にての敗血症作成も、最適な投与量や敗血症程度の判定をいつするのかを決めかねて、マウスを用いた実験を繰り返していたため、当該研究でもっとも費用が必要であった免疫染色やリコンビナント蛋白の作成を施行する必要も時間もなかったため。 新たな敗血症をLPSの経尾静脈投与にて作成しているが、最も大きな課題は一定な敗血症の作成であるが、程度のばらつきも多く、最適な投与量による適切な敗血症程度を早急に決定し、組織の免疫染色のための各種抗体を購入し、免疫染色を施行する予定である。また、サイトカインなどの血中濃度もELISAなどのキット購入にて測定していきたい。 同時に、もっとも費用のかかるリコンビナントADAMTS13の作成も開始していく予定である。
|