研究実績の概要 |
敗血症性急性腎障害(septic AKI)の成因に腎内血流の不均衡が関係するのではないかということを検証するため,平成25年度にcecum ligation and puncture (CLP)による敗血症導入を試行した.腎の皮質と髄質の酸素分圧のモニタリングは可能であったが,敗血症の導入は一定でなかった.このため平成26年度は,大腸菌Lipopolysaccharide(LPS)の投与による敗血症の導入に切り替え,安定した結果を得た.LPSの投与によって,生理的には血圧の低下,心拍数の上昇,呼吸数の増加が観察され、血液検査では白血球数は(3,614±1,303/μl)から、(614±227/μl)に,二酸化炭素分圧は(42.7±4.4Torr)から(25.8±6.1Torr)にともに減少し敗血症性ショックの基準を満たした.LPS投与後6時間では尿量は減少し,血液検査ではbase excessha(BE)は24.3±1.8から13.3±1.9へ減少しアシドーシスを呈し,糸球体慮過量を反映する血清クレアチニン値は0.88±0.10mg/dlから1.65±0.42mg/dlへ上昇し,尿細管障害を示す尿中NAG(N-acetyl-β-D-glucosaminidase)は 1.3±0.5U/lから26.5±27.8へ上昇した.LPSの投与後,血圧の低下を認めたものの,皮質・髄質の酸素分圧の低下は認められず,むしろともに上昇傾向を示した.この結果から,LPS導入によるseptic AKIでは血圧低下に伴う虚血や低酸素がその成因とは考え難く,LPSそのものによる尿細管障害が関与する可能性が示唆された.これを他の検査所見や組織所見と併せて今後、考察を進める予定である.
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