最終年度である本年度は、これまでに3 Tesla magnetic resonance imaging(3TMRI)装置にて取得された一酸化炭素(carbon monoxide:CO)中毒患者のmagnetic resonance spectroscopy(MRS)および拡散強調像(DWI)のデータ解析を実施し、以下のことを明らかにした: 1.CO中毒急性期に脳温は変化し、亜急性期まで遷延する。 2.CO中毒亜急性期の脳温は、白質障害の程度と有意に相関する。 3.新たに開発したDWIに基づく脳温マップでの計測結果は、MRSに基づく従来法で得られた結果と有意に相関する。 上記結果から、本研究では、さらなる大規模な症例数での検討が必要ではあるが、CO中毒患者での非侵襲的脳循環代謝測定を達成し、予後予測を一部可能にした。また、single-voxel(一つの興味領域)での MRSでは困難であった脳温マップを、DWIに基づく新たな解析法にて実現した。本研究で検証・開発された脳循環代謝測定法は、1)MRIに基づき被爆を伴わない、2)造影剤が不要というが利点ある。今後は1)他の脳循環代謝関連疾患での測定、2)同疾患の病態生理との相関関係の検証、3)脳循環代謝量の定量化を目指した精度向上を試み、超高磁場ヒト用7TMRIでの応用も視野に入れて、研究を継続する。
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