研究概要 |
【背景と目的】重度外傷・熱傷患者は、感染症が契機となって多臓器不全で死亡することが多い。われわれは免疫能評価のために白血球表面抗原における網羅的解析(immunophenotyping: IP)の方法を開発し、外傷・熱傷患者における感染症による病態悪化の予測できる可能性を示した。本課題の目的は、熱傷・外傷患者のIPと臓器不全発症との関連性を明らかにすることである。【対象患者】重度の外傷・熱傷により集中治療室での入院加療を要した患者【IP解析法】PEG処理スライドガラスに、解析予定の白血球表面抗原に対する抗体をアレイ状に並べた基盤を作成した。対象患者から採取した赤血球除去白血球液を基板上で incubation後、基板上に微細定常波を作ることができる専用チェンバーを用いて基盤を洗浄処理し、アレイ上に残った白血球を光学顕微鏡下に定量解析した。【アレイに使用した抗体】CD4, CD8, CD11c, CD25, CD16b, CD25, CD36, CD45, CD66b, C-C Chemokine receptor (CCR)2, CCR4, CCR5, CXC chemokine receptor (CXCR)3, CRth2, Toll like receptor (TLR) 2【検討項目】 IP解析と臓器不全との関連性における基礎的検討を行った。【結果と考察】健常人3人および熱傷・外傷患者5人に対して、本法によるIP解析を計10回施行した。熱傷・外傷患者においては、うち3人が感染症を発症し、うち2人が多臓器不全に進展した。多臓器不全を合併した患者では、各種CD抗原においてCCR5とCCR4が非合併患者や健常人の対照群よりもやや高い発現を示した。今後はさらに網羅的IP解析を行い、臓器不全発症をはじめとした臨床経過との詳細な比較を行う予定である。
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