研究実績の概要 |
【背景と目的】本研究の目的は、重度外傷・熱傷後の白血球フェノタイプの変化から感染性合併症による臓器不全が予知できるかを検討することである。 【対象と方法】新たに開発した白血球表面抗原の網羅的簡易解析法(Sekine K, et al. J Immunol Methods 2006 313:96-109)により、重度外傷・熱傷患者16人および健常人5人の末梢血白血球について、以下の白血球フェノタイプを解析した(計36解析)。(CD4/8/11c/16b/25/36/66b/68/123/127/161, Toll Like Receptor(TLR)-2/4, C-Chemokine Receptor(CCR)-2/4/5, CX-Chemokine Receptor(CXCR)-3, CRTh2) 【結果】熱傷患者においては、健常人や外傷患者よりも CCR5 と CXCR3 が低下し(p<0.05)、外傷患者よりも CD68 や CD123 が低下した(p<0.05)。熱傷患者では、感染発症後に CCR5 が増加し(p=0.04)、CD25 が低下した(p=0.02)。 【考察】熱傷患者では、ヘルパーT1(Th1)細胞分画(CCR5, CXCR3)や一部の単球系分画(CD68:ΜΦ,CD123:樹状細胞)が減少するが、感染により Th1 細胞分画(CCR5)の増加と抑制性T細胞(CD25)の減少が見られた。熱傷後の Th1 細胞分画の再上昇は感染合併症およびや臓器不全の発症を示唆し、本法による免疫学的モニタリングは感染や臓器不全の予測に有用となる可能性がある。
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