研究実績の概要 |
【背景と目的】白血球フェノタイプを迅速かつ網羅的に評価するために、われわれは新たに簡易解析法を開発した(Sekine K, et al. J Immunol Methods 2006).本研究の目的は、重度外傷・熱傷後の白血球フェノタイプの変化から感染性合併症による臓器不全が予知できるかを検討することである. 【対象と方法】1)重度外傷・熱傷患者16人および健常人5人を対象として、以下の白血球フェノタイプを解析し、熱傷/外傷/健常人で比較検討した. 2)重度外傷・熱傷患者6人を対象として、以下の白血球フェノタイプを解析し、感染および臓器障害の発症との関連性を評価した. 【白血球フェノタイプ:CD4/8/11c/16b/25/36/66b/123/127/161,TLR-2/4,CCR-2/4/5,CXCR-3,CRTh2】 【結果】1)熱傷患者においては、健常人や外傷患者よりもCCR5とCXCR3が有意に低下し、外傷患者よりもCD68やCD123が有意に低下した.熱傷患者では感染発症後に有意なCCR5の増加とCD25の低下を認めた.2)感染/臓器障害発症後には抑制性T細胞(CD127,CD25)が減少し、ヘルパーT(Th)1細胞(CCR-5,CXCR-3)、単球・マクロファージ・樹状細胞(CCR-2,CD11c)の分画が増加する傾向を認めた.Th2分画(CCR-4,CRTh2)には有意な変化を認めなかった. 【考察】熱傷患者では、Th1細胞分画(CCR5,CXCR3)や一部の単球系分画(CD68:MΦ,CD123: 樹状細胞)が減少するが、感染により Th1 細胞分画(CCR5)の増加と抑制性 T 細胞(CD25)の減少が見られた.熱傷後の Th1 細胞分画の再上昇は感染合併症および臓器不全の発症を示唆し、本法による免疫学的モニタリングは感染や臓器不全の予測に有用となる可能性がある.
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