研究実績の概要 |
今年度は、T細胞レパトア形成に必須であるT細胞受容体(TCR)多様性の遺伝子解析、抗原提示の抑制分子であるprogrammed death (PD)-1のT細胞における発現を中心に敗血症性ショック患者におけるT細胞機能を経時的に検討した。方法は、敗血症性ショック患者におけるTCR beta V-J領域の遺伝子解析はmultiplex PCRにて、CD4/CD8、PD-1+CD4+、CD3+リンパ球数はFACSにてICU入室1,3,7病日に測定した。その結果、TCR多様性、リンパ球数は健常人に比し敗血症性ショック患者において1病日にすでに減少を認め、以後全身状態の改善とともに回復傾向を示した。死亡例においては低値にて推移した。PD-1+リンパ球は、健常人に比し敗血症性ショック患者において1病日にすでに増加を示しており、T細胞活性化の抑制が示唆された。CD4/CD8は敗血症性ショック患者において低下傾向を示した。CD8+T細胞に比しCD4+T細胞の減少が顕著であった。単球におけるHLA-DR発現は1病日にすでに著明な低下を認めた。考察として敗血症性ショック患者では発症早期よりT細胞、単球間における抗原情報受け渡しシステムに障害を来すとともに、TCR多様性にも障害を認めた。リンパ球は数の減少のみならず質的障害も生じていることが明らかになった。Immunoparalysisは敗血症末期の合併症でなく、敗血症発症早期から認められ、重症化の原因である可能性が示唆された。
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