研究課題/領域番号 |
24592769
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
長宗 秀明 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (40189163)
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研究分担者 |
田端 厚之 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 助教 (10432767)
友安 俊文 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 准教授 (20323404)
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キーワード | Streptococcus mitis / 連鎖球菌 / 毒素 |
研究概要 |
昨年及び本年度に収集し作製したS. mitis(SM)株パネルを用い、単一あるいは複数のコレステロール依存性細胞溶解毒素(CDC)を分泌する高病原性SM株をスクリーニングし、CDC保有パターンの異なる代表株を選定して感受性促進ペプチドによる形質転換法等で各CDCのノックアウト(KO)株の作製を進めた。しかし選定したSM株の形質転換性が低く、解析に必要なKO株が得られておらず作製を継続している。一方、これと並行し進めているCDC保有パターンの異なるSM株のゲノム解析では、さらに株数を40株以上増やして得られたドラフトゲノムデータを既知の近縁菌種ゲノムデータと合わせてマルチローカス遺伝子解析(MLSA)した結果、肺炎球菌やCDCを持たない通常のSM株はSM株のクレード中で各々孤立したクレードを形成し、これらは高病原性SMと異なる亜系統と考えられた。しかしSM株におけるCDCの保有パターンはMLSAパターンと明確な相関性を示さず、高病原性SM株は不均一な菌群を形成することが示唆された。次ぎにSM株パネルのペニシリン(PG)耐性を検討した結果、健常人由来株と感染症患者由来株における高病原性SM株の出現率は41%:63%と後者が有意に高く、また感染症患者由来の高病原性SM株でのPG耐性化率は89%と高かったことから、SM株のCDC保有状況はSMの病原性やPG耐性化現象と密接に関係している可能性が示唆された。さらに、マルチプレックスPCRによる高病原性SM株の特異的検出法の開発も開始し、各CDC保有パターンも同時に識別できるシステムを構築できた。 今後は本年度に引き続き、各CDCがSM株の病原性に果たす役割の解明を進めるとともに、代表株の全ゲノム解析も完了させて高病原性SM株の分類学的位置を明確にし、本年度開発した検査法にイムノクロマトを組み合わせた迅速検査システムの構築も目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の計画では高病原性SM株の保有する各CDCのノックアウト株(KO株)を作製し、それを用いた病原性解析を行う予定であった。しかし収集したSMパネルから選定し使用した、CDC保有状況の異なる株の典型株については形質転換効率が低く、解析に用いるKO株を得ることができなかったことから、さらに株を変えて作製を継続中であるため、本年度はこの区分を選定した。 しかし当初計画では平成26年度に予定していた研究項目も前倒しで進行しており、その成果は着実に上がってきている。例えば47株のSMゲノム解析の結果から、高病原性SM株はCDCを持たないSM株や肺炎球菌と異なる亜系統を形成していることはほぼ確実になってきた。また高病原性SMを肺炎球菌などの近縁他菌種と識別するPCR検査系も作製に成功しており、計画にある高病原性SM株の迅速検査系の構築にも見通しが立ってきた。 以上のことから総合的にみると、当初計画した本年度の計画では遅れを生じているが、3ヶ年の研究全体では研究項目の実施時期の前後はあるものの、ほぼ順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度計画で遂行ができなかった研究項目については引き続き、作製したSM株パネルに含まれるCDCの保有状況の異なる高病原性SMの代表株中から形質転換率の高い株を選別し直し、形質転換法の改善・最適化を行って手法を確立して、各CDC遺伝子のノックアウト株(KO株)を作製する。次ぎにそれらの各高病原性SM株と得られたKO株を用い、ヒト指向的感染性の有無や高病原性SM株の病原性に対する各CDCの寄与に関して、in vitroのヒト及び他動物の培養細胞系やin vivoのマウス個体系で検討を行う。また各CDCの遺伝子発現制御についても、レポーターアッセイ法や免疫化学的手法等を利用して明らかにしていく。また前倒しで進行中の高病原性SM代表株の全ゲノム解析を完了し、通常のSM株と高病原性SM株の遺伝子構成を比較することでCDCを含めた病原因子の情報を得ると共に高病原性SM株の分類学的な位置関係の明確化を行い、これらを総合して高病原性SM株の病原性発現のメカニズムについて解明を目指す。またSM株パネルの薬剤耐性化について、ペニシリン系以外の抗生物質についても検討を行い、薬剤耐性化・CDC保有状況・分離源となった感染症患者の臨床所見の3者間の関連性について解析を進める。さらに、本年度開発したマルチプレックスPCRによる高病原性SM検査法を発展させ、より検出を迅速簡便化した融合PCRイムノクロマトシステムとして、高病原性SM株の検査システムの開発を行う。以上を総合して、本研究課題の目的達成を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画の中で作製が予定されていた遺伝子ノックアウト株が、本年度の研究過程で得られなかった事から遂行ができなかった研究項目があり、その経費についての残額が出たことによる。 本年度の経費残額は次年度の消耗品購入経費に繰り込み、本年度計画の研究を平成26年度も継続をするための経費として平成26年度の研究経費と合わせて使用する。
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