研究課題/領域番号 |
24592779
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
澤田 隆 東京歯科大学, 歯学部, 准教授 (60125010)
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研究分担者 |
柴山 和子 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (60408317)
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キーワード | 接合上皮 / 内側基底板 / ラミニン5 / アメロチン / 免疫組織細胞化学 / in situ hybridization |
研究概要 |
歯肉接合上皮-エナメル質界面の微細構造、化学組成、および接着能を明らかにするために透過電子顕微鏡解析、免疫組織細胞化学解析、in situ hybridization 解析による研究を施行した。材料には日本ザルとマウスの歯肉を用いた。その結果、サル歯肉では電子密度の高い内側基底板がエナメル質と接合上皮の間に介在し、歯冠側に向かいその厚さを増した。歯冠側には電子密度が内側基底板と同程度で無構造状の歯小皮が内側基底板のエナメル質面にしばしば出現した。ラミニン5抗体による金コロイド標識免疫電顕観察の結果、内側基底板に沿って金コロイドが沈着し、その分布密度は歯冠側に向かい増加していることが明らかとなった。歯小皮にもラミニン5の沈着が確認された。次に、ラミニン5の産生細胞を調べるためにin situ hybridization 法によりラミニン5 mRNAの発現をマウス歯肉で調べた。その結果、mRNAを発現している細胞はエナメル質に接着した接合上皮細胞に特異的であり、接合上皮を構成するその他の細胞にはシグナルの発現は見られなかった。さらに歯冠側に位置している細胞に強いシグナルが認められた。この実験結果は免疫電子顕微鏡の所見を支持するものである。 接合上皮とエナメル質の接着に関与しているとして、最近注目されているアメロチンについて免疫染色によるタンパク局在とin situ hybridization によるmRNA発現を検討した。その結果、内側基底板に明瞭な陽性反応が観察されるのに対して、接合上皮にはmRNAのシグナルは認められなかった。以上より、機能歯の接合上皮内側基底板に局在するラミニン5は基底板直上の接合上皮細胞が活発に産生しているのに対して、アメロチンは歯の形成時に成熟期エナメル芽細胞が産生したもので、歯の萌出後に内側基底板に組み込まれたものと推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.歯肉接合上皮―エナメル質界面の微細構造と化学組成について、透過電子顕微鏡と金コロイド標識免疫電顕によるラミニン5の超微局在をサル歯肉を用いて検索した結果、「研究実績の概要」に記載した通りの研究成果を得ることができた。成果の一部は組織細胞化学会にてポスター発表を行い、これに関連する論文は現在作成中である。 2.ラミニン5とアメロチンmRANの発現についての結果を論文としてまとめJ MOL HISTOLに投稿した。査読者から、それぞれの蛋白質についての局在所見も追加データとして加えるように要求されたが、幸いアメロチン抗体を海外研究協力者から供与されたので、そのデータを追加した。投稿論文は受理され、J MOL HISTOLに掲載された。 3.三次元培養法についてはブタ(家畜用)の新鮮顎骨から、歯肉上皮(接合上皮含)の第1回目の分離培養を試みた。上皮の生育は確認できたが、コンタミが著しいので、三次元培養には至らなかった。現在、動物の入手先およびサンプリング法の改善等について検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
1.歯の萌出に伴う接合上皮の発生に焦点を絞り、内側基底板の形成とその維持についてのメカニズムを検討する。 2.三次元歯肉培養については、ヒト由来組織の入手が困難であることから、ヒトの組織によく似ているとされるブタ(実験用として飼育されたもの)を材料に選定し、これから口腔粘膜上皮、歯肉接合上皮、固有層結合組織を採取して三次元培養法を試みる。ヒト生体組織に対応する三次元培養接合上皮モデルの確立を目指す。これを用い、内側基底板の形成を誘導する因子について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度研究成果発表の旅費(海外分)として必要経費を計上していたが、当該年度にこの予算を執行しなかった。 ブタ三次元歯肉培養系の確立のために、実験用ブタ(SPF)の購入代金として使用。作製した培養組織の形態学的および分子細胞生物学的評価のための実験用試薬等に使用。成果発表のための旅費および印刷費として使用。
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