歯肉接合上皮―エナメル質界面の微細構造、化学的組成、およびエナメル質との接着機構を明らかにするために高分解能透過型電子顕微鏡解析、免疫組織細胞化学解析、in situ hybridization解析による研究を実施してきた。本年度は前年度と同様サルを材料に接合上皮内側基底板の発生について、成熟期エナメル芽細胞と形成中のエナメル質界面を免疫電顕を用いて解析した。その結果、エナメル質―エナメル芽細胞界面には基底膜様構造がみられ、これはlamina lucidaとlamina densa、およびエナメル質側の第3層すなわちlamina fibroreticularisで構成されていることが確認できた。ラミニン5はこのうちlamina densaに限局して局在していた。一方、lamina fibroreticularisにはラミニン5は局在せず、代わりにアメロチンが特異的に局在していることが明らかとなった。アメロチンは石灰化促進機能があると考えられていることから、今回の結果は、アメロチンが成熟期エナメル芽細胞の基底膜様構造の第3層であるlamina fibroreticularisの石灰化を促し、これによりエナメル質表層との接着をより強固なものにしていることが示唆された。本研究の結果は専門誌Histochem Cell Biolに掲載された。 接合上皮は退縮エナメル上皮に由来する組織であることから、上述したアメロチンによる接着機構が内側基底板とエナメル質の結合にも存在することが予測される。そこで次に、ミニブタを新たに材料として用い、萌出途上歯の接合上皮について前回と同様の手法で解析した。その結果、内側基底板のエナメル質側にはアメロチンが局在しており、これが石灰化してエナメル質最表層を構成していた。以上、接合上皮は成熟期エナメル芽細胞と同様の接着機構を有していることが示された。
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