研究実績の概要 |
口腔レンサ球菌の中で、ミティスグループ、アンギノーサスグループ、ミュータンスグループの菌では、ペプチドフェロモンのcompetence-stimulating peptide (CSP)存在下、外来性DNAの取り込みと形質転換効率の上昇が認められる。深部膿瘍形成などの病原性で知られるアンギノーサスレンサ球菌は近縁の3菌種6亜種(平成27年時点)で構成されており、その病原因子には菌種固有のものとグループ内で共通するものとが混在する。 本課題では、菌種特異的病原関連因子を多数産生するStreptococcus intermedius (Si)を用い、ペプチドクオラムセンシング下での遺伝子獲得および組換え機構に関する検討を行った。アンギノーサス群の菌はおもに、CSPとbacteriocin-inducing peptide (BIP)とでペプチドでクオラムセンシングを行い、前者は遺伝子組換え、後者はバクテリオシン産生を惹起すると推定された。平成25年度までに、Siの基準株から、CSPで作動するcom系遺伝子群、BIPで作動するblp系遺伝子群の欠失株を作製し、性状を検討してきた。 平成26年度には、前年度の検討を継続するとともに、ペプチドフェロモン影響下、com, blpの重複欠失株の性状の検討を行った。その結果、com, blpの制御系は相互抑制的である一方、バクテリオシンの産生がバイオフィルム中の菌体外DNA量の上昇に関与している可能性が示された。また、ストレス作動性のcia遺伝子群の欠損はペプチド非添加時の形質転換効率を上昇させることから、環境感知遺伝子群の複雑な相互作用が、菌同士の遺伝子交換を制御していることが示唆された。重複遺伝子欠損の組み合わせによっては、バイオフィルム形成能が大幅に低下することを確認したので、遺伝子制御についてさらに解析し、成果を公表準備中である。
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