研究課題
EBウイルス由来RNAであるEBERがシェーグレン症候群の発症に関与しているか否かを検討する目的で、マウス免疫用のEBERレンチウイルスを増やした。しかしながら、レンチウイルスのタイターがなかなか上がらず、EBERの免疫を変更し、EBウイルス陽性B細胞株であるAkata細胞の核抽出液で免疫することにした。Akata細胞はIgGで架橋する事でEBウイルスの再活性化が誘導される。Akata細胞をIgGの存在下で24時間培養し、核抽出液を得た。7週齢のBALB-cマウスの雌にAkata細胞の核抽出液を8μgおよび40μgを不定期で投与した。投与後約2週間後に尾静脈から血液を採取し、抗マウスSSB/La抗体および抗ヒトSSB/La抗体の抗体価をELISA法にて測定し、自己免疫応答が惹起されるか否かについて検討を行った。コントロールにはAkata細胞から分離樹立したEBウイルス陰性のAkata2-2細胞を用いた。投与開始45日目までは、Akata細胞、Akata2-2細胞由来NEの8μg、40μgで差は認められなかったが、59日目から40μg投与群で抗ヒトLa抗体値に上昇が見られ始めた。しかしながら、Akata細胞NEとAkata2-2細胞NEとの明らかな差は認められなかった。Akata2-2細胞NE投与群で1個体について、非常に高い抗体価が得られたが、これは腹腔内投与の時に血管に入ってしまった可能性が考えられる。また初回投与開始115日目移行にはAkata細胞NE投与群に抗マウスLa抗体価の上昇が見られた。また、Epitope spreadingの可能性を考え、マウスおよびヒトSSA/Roの発現プラスミドを作成し、ELISA法の確立を試みたが、SSA/Ro蛋白の大腸菌細胞内でinclusion bodyを形成してしまい、現在蛋白の溶解化について検討を行っている。
3: やや遅れている
平成24年度に作成したEBERのレンチウイルスのタイターが十分に得られず、マウス投与する量を得るために様々な条件を変えて検討したが、現実的に量の確保がむずかしいと判断した。また、平成24年度に引き続き、EBウイルス感染B細胞株のAkataを用いた検討では、予想していた結果が得られなかった。
EBERをマウスに免疫するに十分な量を確保するために、in vitro転写キットを用いて検討を行う。また、EBER発現する遺伝子改変マウスを作成して、EBERがTLRを介した自然免疫を惹起し、自己免疫応答を誘導しうるか否かを検討する。さらに、 in vitroではヒト唾液腺上皮細胞にTLR9,TLR3を恒常的に発現する細胞株を作出し、これにEBウイルス由来のDNAあるいはRNAを作用させたときのサイトカイン産生、ならびにBAFFの転写活性を検討することで、もし動物実験で予想通りの結果が得られなかった場合に、唾液腺局所でEBウイルスが引き起こしうるイベントを検証する。
当初の予定通り、平成25年度はマウスの免疫実験を行った。次年度も予定していたとおり、引き続きマウスの免疫実験あるいはトランスジェニックマウス作成し、唾液量の測定、自己抗体の測定などを行いシェーグレン症候群様の病態が確認できるか検討を行う。次年度はEBERの遺伝子改変マウスを作出し、自己免疫応答が惹起され、シェーグレン症候群様の病態を形成できるかを確認する。EBER遺伝子改変マウスは理化学研究所との共同研究で行い、実費を当該研究費から支払う。また、それらを遂行するための試薬、物品、研究協力者への謝金、研究発表の為の旅費に使用する。
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