研究課題/領域番号 |
24592787
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
雪田 聡 松本歯科大学, 歯学部, 助教 (80401214)
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研究分担者 |
中村 浩彰 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (50227930)
細矢 明宏 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (70350824)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | SUMO / 骨芽細胞 / 分化制御 / 遺伝子改変マウス |
研究概要 |
マウス筋芽細胞由来の培養細胞株C2C12細胞を用いた我々の研究から、SUMO化修飾阻害はBMP誘導性の骨芽細胞分化を促進させ、その原因の少なくとも一部はBMPシグナル伝達において転写因子として機能するSmad4のSUMO化修飾にあることが明らかになった。本研究課題ではSUMO化修飾に必須の酵素であるUbc9を骨芽細胞特異的に欠失した遺伝子改変マウスを作成し骨形成について野生型と比較することにより、生体内の骨形成におけるSUMO化修飾の役割を明らかにすることを目的としている。 特定の細胞でのみUbc9を欠損したマウスを作製することを目的とし、本年度はUbc9 folxマウスを作出することを予定していたが、遺伝子改変マウスの作製に必要なターゲティングベクターの構築が難航している状況である。 その一方で、C2C12細胞よりも骨芽細胞への分化度が進んだ骨芽細胞前駆細胞由来MC3T3-E1細胞ではUbc9の機能阻害は骨芽細胞の石灰化を阻害するという結果が得られた。これは、骨芽細胞の分化段階によりSUMO化修飾が異なる役割を担っていることを示唆しており、Smad4のみならず骨芽細胞への分化に重要な他のタンパク質がSUMO化修飾によりその機能が制御されていると考えられた。現在までに、転写因子OsterixがSUMO化修飾を受けることを見出しており、今後Osterixの機能がSUMO化修飾によってどのように制御されているかを明らかにしていきたいと考えている。 以上より、予定している遺伝子改変マウスを用いたin vivo実験と並行して、培養細胞株およびマウス骨芽細胞の初代培養細胞を用いたin vitro実験によって、骨芽細胞分化段階におけるSUMO化修飾の役割およびその標的タンパク質の解明も行う必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
骨芽細胞でのみUbc9を欠損し、SUMO化修飾が阻害されたマウスを作製することを目的として、Ubc9遺伝子配列の一部(第3エクソン、E3)をLox P配列ではさんだ遺伝子改変マウス (Ubc9 floxマウス)の作製を行う予定であったが、適切なターゲティングベクターの構築に至らなかった。 その一方で、C2C12細胞の他、骨髄間質細胞由来細胞株ST2細胞や骨芽細胞前駆細胞由来MC3T3E1細胞など他の培養細胞株を用いた実験から、SUMO化修飾は骨芽細胞の分化が進むにつれて異なる役割を担っていることを示唆するデータを得ることができ、さらに、骨芽細胞分化に必須の転写因子であるOsterixがSUMO化修飾の標的タンパク質であることも明らかにした。 以上の結果から、遺伝子改変マウスの作製については予定より遅れているものの、当初は予定していなかった実験から大変興味深い結果を得られたことを考え、自己評価を「(3)やや遅れている。」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子改変マウスについては、ターゲティングベクターの構築を続行し、Ubc9 floxマウスの作出を急ぐ。構築に際し、プラスミドDNAの立体構造などが構築を困難にしている可能性が考えられるので、ライゲーション反応の条件を温度や反応時間についてさらに検討する。ターゲティングベクターの構築がさらに難航する場合、計画が順調に進んでいる以下のin vitro実験を集中的に行うこと、遺伝子改変マウス作製業者に作製を依頼すること、の2点について検討を行う。 In vitro実験においては、用いる細胞株それぞれについてアルカリホスファターゼ活性の他、骨芽細胞分化マーカーの発現などを指標にUbc9のノックダウンが骨芽細胞分化に与える影響を検討すると同時に、siRNAによる一時的なノックダウンのみならずshRNAの手法を用いることにより恒常的にUbc9をノックダウンして長期にわたりSUMO化修飾を阻害した場合の骨芽細胞分化への影響を明らかにする。 OsterixのSUMO化修飾に対する研究についてはOsterixタンパクのアミノ酸配列中にSUMO化修飾に対するコンセンサス配列が存在しないため、N末端側のみ、中央領域のみ、あるいはC末端側のみからなるOsterix変異体を作製してそれぞれの変異体がSUMO化修飾を受けるかを検討することなどによりSUMO化修飾を受ける領域を決定していく。最終的にはOsterix中に存在するSUMOタンパクが結合するアミノ酸残基に変異を加え、SUMO化修飾が起きない変異体Osterixを作製し、野生型と機能を比較することによりSUMO化修飾によるOsterixの機能制御を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費を効率的に運用するために、試薬等消耗品を最小限に抑える努力を行った結果、51,199円の次年度使用額が生じた。翌年度以降に請求する研究費と合わせ、上述した今後の研究推進方策に則って研究を行う。 次年度使用額については、遺伝子改変マウスの作製と並行して行うin vitro実験に対して主に使用し、培養細胞培地および分子生物学的な手法に必要な試薬に充てることを予定している。
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