本研究課題では、歯垢形成過程におけるアクチノマイセス属細菌の働きを明らかにするために、2つの方向性により研究を進めてきた。①口腔由来Actinomyces oris MG-1株およびK20株(臨床分離株)を対象にランダムミュータジェネシスを行い、バイオフィルム形成に関連する形質が欠損した変異株プールを作製することで、細菌の付着・定着・共凝集するに関与する候補遺伝子を同定する。②①で絞り込んだ遺伝子の機能を解析するために必要となる遺伝子ツール(プラスミドなど)を作製することにより、①の研究を迅速かつ的確にするめる。 24、25年度で、アクチノマイセスのバイオフィルム形成に関与する新規の候補遺伝子を絞り込めた(①の成果)ので、以降は②の研究を中心に進めた。その結果、アクチノマイセス属細菌で唯一複製が可能なプラスミドを見出し、遺伝情報を明らかにした上で、改良型のプラスミドを作製した(②の成果)。さらに、このプラスミドが対象株以外の口腔由来アクチノマイセス属でも使用可能かどうかの評価も行った。しかし、本プラスミドは、研究対象株であるMG-1株およびK20株の遺伝子改変や遺伝子発現量評価などの系に用いると不安定であることが分かった。そこで、最終年度は、菌株の再選定や遺伝子ツール構築の再検討を含めて、安定した状態で遺伝子改変が行える実験系の整備を行った。
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