研究課題/領域番号 |
24592793
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
山村 健介 新潟大学, 医歯学系, 教授 (90272822)
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研究分担者 |
井上 誠 新潟大学, 医歯学系, 教授 (00303131)
黒瀬 雅之 新潟大学, 医歯学系, 助教 (40397162)
北川 純一 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (50373006)
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キーワード | 嚥下 / 嚥下誘発支援装置 / 嚥下障害 |
研究概要 |
申請者らは、ヒト咽頭領域の電気刺激により、嚥下を誘発するシステムを開発した。このシステムを利用して、非侵襲型の嚥下誘発支援装置を開発することが我々の研究の最終目的である。本研究はその第一段階として、動物で装置の効果を検証することと、ヒトで電気刺激開始のトリガーとなる生体信号を非侵襲的に検出するシステムを確立することを目的とする。24-25年度に動物でトリガー信号とする嚥下誘発支援装置を作成し、その効果を嚥下障害モデル動物で確認すること、26年度にヒトで近赤外光スペクトロスコピー(f-NIRS)とECGの同時記録を行い、ヒトにおける最適なトリガー信号源およびその記録法を確立することを目的としている。24年度は健常動物の大脳皮質咀嚼野の外側部から細胞外電極を用いてフィールド電位を記録することに成功し、同部位から低侵襲型ECoG多点電極でも嚥下関連電位を記録できることを確認した。25年度はヒトでのトリガー信号源の検出に向けて、f-NIRSを用いてヒト随意嚥下時の前頭前野活性を調べる実験を行った。当初被験者には単発の唾液嚥下を行わせ、複数回の試行の前頭前野活動を加算することでトリガー信号源となり得る明確な活動が得られると考えていたが、実際には血液中の酸素ヘモグロビン濃度変化をとらえるf-NIRSでは明確な嚥下関連活動変化を記録することはできなかった。そこで被験者に行わせるタスクを嚥下機能評価で用いられるRSST(反復唾液嚥下テスト)で行わせる随意性繰り返し嚥下20秒間(本来のRSSTでは30秒間)に変更し、その際の前頭前野活性をf-NIRSで記録することとした。その結果複数の被験者で右側の外側前頭前野に有意な酸素ヘモグロビン濃度の上昇を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24-25年度に動物でトリガー信号とする嚥下誘発支援装置を作成し、その効果を嚥下障害モデル動物で確認することが当初の予定であったが、嚥下障害モデル動物の作成が難航し、嚥下障害モデル動物での装置の効果判定は困難な状況である。嚥下障害モデル動物の作成はその可否を含めて決断を急ぐ必要がある。一方で、25年度中にf-NIRSを用いてヒト大脳皮質前頭前野から嚥下関連活動を記録できた点については当初の予定を上回っている。以上を勘案すると「おおむね順調」と評価してよいと思う。
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今後の研究の推進方策 |
25年度で検出に成功したヒト随意性繰り返し嚥下時の右側外側前頭前野嚥下関連の活動の再現性をさらに被験者数を増やすことで確認すると共に、よりトリガー信号に適した活動を得るためにf-NIRSとECGの同時計測を行う。随意運動を支援する運動出力型BMIでは、実験動物あるいは患者さんの訓練を行うことで、脳活動をデコーディング用のインターフェイスおよび出力装置とマッチングさせる過程が必須である。申請者が理想とする嚥下誘発支援装置はそのような訓練が不要なものであるが、患者が「これから嚥下する」という信号を発し、それをトリガー信号として検出することができれば、実用上は十分なものになると考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
ヒトを用いたf-NIRS実験のタスクを当初の予定から変更したため、サンプル数を増やす段階にいたっておらず、被験者への謝金が生じなかったため計上していた謝金を使用しなかったため。 次年度に兵権じゃしゃきんとして計上した。
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