研究課題/領域番号 |
24592794
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
織田 公光 新潟大学, 医歯学系, 教授 (10122681)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 低フォスファターゼ症 / 先天性遺伝疾患 / アルカリフォスファターゼ / 発症メカニズム / 石灰化不全 |
研究概要 |
その1. 変異酵素の解析[TNSALP(N417S)、TNSALP(G420S), 標準命名法による]:低フォスファターゼ症で報告されたヒト組織非特異型アルカリフォスファターゼ(TNSALP)の変異酵素をほ乳類由来の細胞にそれぞれ発現して野生型酵素と細胞生物学的な詳しい比較検討を行った。両変異酵素ともによく似た性状を示した。特に、野生型酵素が酵素活性を有する2量体としてして細胞表面に存在するのに対して、変異酵素はいずれも2量体を形成できずに酵素活性を欠く単量体として細胞表面に存在することを明らかにした。このことは、417番目のアスパラギンと420番目のグリシンは2量体形成に必須であることを示しているとともに、2量体形成の不全が低フォスファターゼ症発症の原因であることが推測された。 その2. 変異酵素[TNSALP(D306V)、標準命名法による]の認識分解機構の解析:本変異酵素は哺乳動物由来の細胞に発現すると細胞表面に到達できずに小胞体で分解を受けることを報告していたが、その認識にはN型糖鎖が関係しており、最終的にはユビキチン化を受けた後にプロテアソームで分解されることを裏付ける結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
その1. 変異酵素の解析[TNSALP(N417S)、TNSALP(G420S):すでに実験を完了しTNSALP(G420S)についてはすでにその内容を発表済みである(FEBS 279, 4327-4337, 2012)。またTNSALP(N417S)についても4月24日付けで受理された(Molecular Genetics and Metabolism)。 その2. 変異酵素[TNSALP(D306V)、標準命名法による]の認識分解機構の解析:さらに詳細な解析の前提となるTNSALP(D306V)を誘導的に発現するTet-On CHO細胞の樹立した。
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今後の研究の推進方策 |
1. 計画通り新たな変異酵素[TNSALP (P108L)]の解析を行う:本変異は歯限局性の低フォスファターゼ症で報告された変異で、優性遺伝するとされる。本変異酵素と野生型酵素を単独で、あるいは共発現させて(優性なので野生型に何らかの作用をする可能性がある)、細胞生物学的に詳細な比較検討を実施する予定である。種々の実験方法に関してはすでに当研究室で確立している。 2. 変異酵素[TNSALP(D306V)]の認識分解機構の解析:より詳細な機構の解析には本変異酵素を誘導的に発現する細胞の確立が前提となる。TEt-On CHO細胞をすでに樹立しているが、今後の研究の展開を考えて遺伝子がすべてわかっているヒトあるいはマウス由来の細胞系を樹立を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は計画通りに消耗品と旅費に研究費を当て、また一部はリプリント代に使用したい。 複数のTet-On細胞の購入費、細胞の樹立、遺伝子変異の導入などにかかわる消耗品の購入と国内学会や研究会での発表の旅費がその内訳である。
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