研究課題
咀嚼サイクルは大別して開口相・速い閉口相・遅い閉口相の3つから構成されている。遅い閉口相において食物の噛み締めが行われるが、この相は顎間距離が大きく変化しないため、閉口筋等尺性収縮運動と見なすことができる。この時、閉口筋においても四肢・体幹筋に準じた運動単位の序列動員が行われていると考えられるが、閉口筋の伸張反射回路は四肢・体幹筋と異なる特徴を持っており、また食物の硬さに応じた非常に精緻な筋張力調節が可能であることが知られていることから、閉口筋に特異的な動員神経機構が存在する可能性も高い。そこで、精緻な咬合力調節を実現している最も基礎的な神経基盤と考えられる閉口筋α運動ニューロンの動員機構について、四肢筋・体幹筋と同様な序列動員が生じるか否か、生じるならばどの様な神経機構で実現されているのか、序列動員を調節し得る機構は何か、についてin vitroの実験系で明らかにすることを目的として研究を企画実施した。その結果、閉口筋運動ニューロンでは、四肢・体幹筋と同様にサイズの原理に基づいた序列動員が行われるが、不均一なTASK1/1及びTASK3/3チャネルの分布により、細胞体径の分布の幅に見合う範囲を上回って入力抵抗値は広範な分布を示した。この特徴が、伸張反射回路を介する筋紡錘感覚入力により精緻な張力調節を実現する最も基礎的な機構となっていることが考えられた。また、一酸化窒素作動性入力の活性化により、同ニューロンの動員様式が変調を受ける可能性が示された。これらの所見から、閉口筋の運動制御に関わる脳幹レベルの神経回路は、四肢筋・体幹筋の制御に関わる脊髄レベルの神経回路とは根本的に異なる特徴を複数有していることが明らかとなった。三叉神経中脳路核ニューロンの軸索に特異的にチャネルロドプシン2を発現する動物の作製は実現できなかった。この点については、今後も研究を継続して行きたい。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件)
The European Journal of Neuroscience
巻: 41 ページ: 998-1012
10.1111/ejn.12858