研究概要 |
今年度はゴーシェ病患者口腔粘膜由来iPS細胞の樹立と、患者由来口腔粘膜線維芽細胞を用いたGBA遺伝子変異の同定を行った。 すでにゴーシェ病患者1例からインフォームドコンセントの後、口腔粘膜組織を採取し、線維芽細胞を分離後、レトロウィルスベクターにてリプログラミング4因子(OCT4, SOX2, KLF4, c-MYC)を導入し、iPS様細胞を得ていたため、その性質を解析するところから開始した。 まず得られたiPS細胞様クローンの中から6クローンについて、導入したリプログラミング遺伝子のmRNAレベルをRT-PCRにて確認し、サイレンシングが起きていることを確認した。次にESマーカー(NANOG, OCT4,SSEA4, TRA1-60)を免疫染色法にてタンパク質レベルで同定した。さらに、2クローンについて、①胚葉体形成実験および、②SCIDマウス精巣へのiPS細胞移植によるテラトーマ形成実験を行った。①では三胚葉由来組織マーカー(Neurofilament H, α-smooth muscle actin, α-fetoprotein等)が免疫染色法にて検出され、②ではテラトーマの薄切標本から、組織学的に多分化能を確認した。さらに4)核型解析を行い、正常な核型のクローンが樹立できており、ゴーシェ病患者口腔粘膜由来iPS細胞の樹立に成功した。 一方、ゴーシェ病患者口腔粘膜線維芽細胞を用いたGBA遺伝子変異の同定は、ゲノムPCR法によりGBA遺伝子をいくつかのDNA断片としてクローニングし、シークエンスを行った。結果として、エクソンの2カ所に1塩基置換変異を同定した。別の手法として、SNaPshot解析によりこの変異を確認した。現在インフォームドコンセント後、同意を得たご家族の口腔粘膜組織を採取し、線維芽細胞を分離培養後、同様にGBA遺伝子のゲノムシークエンスを確認中である。
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