研究課題/領域番号 |
24592801
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
三好 圭子 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 講師 (20304537)
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研究分担者 |
野間 隆文 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (40189428)
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キーワード | 口腔粘膜線維芽細胞 / ゴーシェ病 / 疾患特異的iPS細胞 |
研究概要 |
疾患メカニズムの解明には、昨年度作製した患者由来iPS細胞のもつ遺伝子情報が不可欠であることから、まず患者由来線維芽細胞を用いて疾患責任遺伝子GBA1の変異を同定し、ご家族の口腔粘膜由来線維芽細胞の遺伝子配列と比較することでその変異を確定した。方法は、鋳型として1)mRNA 2)ゲノムDNAを用いてnested PCRにより標的部位を増幅した後にダイレクトシークエンス法、およびSNaPshot法にて解析した。また、ゲノムDNAを用いたエクソーム解析により、同定した遺伝子変異を再確認した。その結果、患者のGBA1にはエクソンの2カ所に1塩基置換変異があるが、いずれもヘテロ変異であることが明らかとなった。これは常染色体劣性遺伝という疾患の定義と矛盾する可能性があり、GBA1遺伝子以外にゴーシェ病の発症に寄与する遺伝子変異が存在することを示唆すると考えられる。 また、患者家族の口腔粘膜線維芽細胞を用いてGBA1がコードするグルコシルセラミダーゼ酵素の活性を測定した結果、本疾患を発症していない患者の家族の酵素活性が健常者の活性より低いことを見いだした。これを利用して、現在、患者及び家族の全ゲノムに対するエクソーム解析の結果を検討中である。 以上の結果から、未知の疾患メカニズムの存在が示唆されることから、本症例での疾患メカニズム解明が、これまで原因不明の疾患群とされていた症例に対して新たな診断法及び治療法の開発につながることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、今年度は患者口腔粘膜由来iPS細胞からin vitro疾患モデル系を構築し、メカニズムに迫ることと、患者家族の遺伝子解析から疾患遺伝子変異の遺伝様式を確認する予定であった。しかしながら、解析結果から同定されたGBA1遺伝子変異が想定外のものであり、新たな疾患メカニズムが存在する可能性が示唆された。この予期せぬ結果により、遺伝子解析を発展させる必要性が生じたため、現在その解析を進めている。従ってin vitro疾患モデル系の構築に着手できていない。この点に関しては、研究の本来の目的である「病態メカニズムの解明および新規遺伝子治療法の開発のための基礎研究」という点で、当初の計画以上に進展しているとも評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、難治性疾患の1つであるゴーシェ病患者の口腔粘膜から疾患特異的iPS細胞を樹立し、さらに疾患特異的な細胞分化系を構築して、病態メカニズムの解明および新規遺伝子治療法の開発のための基礎研究を行い、再生医療における歯科の新たな役割を提示することを目的としている。 今後は、患者およびそのご家族由来の口腔粘膜組織由来線維芽細胞株を用いたゲノムDNA解析の結果に基づき、以下のとおり研究を推進する。1)変異型疾患原因遺伝子の発現ベクターを構築し、細胞に導入して酵素活性への影響を確認する。2)患者由来iPS細胞を用いてin vitro 疾患モデル系を構築し、発症・病態メカニズムの解析を行う。3)in vitro 疾患モデル系を用いて、新規薬物のスクリーニングや新規遺伝子治療法による効果の評価を行う。 最後に研究成果について総括し、ゴーシェ病の病態メカニズムの解明や治療法のモデルとしての有用性を提案する。
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次年度の研究費の使用計画 |
遺伝子解析の結果、疾患原因遺伝子と想定していた遺伝子変異では説明がつかず、解析を患者から家族まで、さらにゲノムワイドに広げる必要が生じたことにより、分化誘導系に実験を進められなかったことから、平成25年度分に未使用の差額が生じ、次年度に繰り越す必要が生じた。 平成26年度は、当初25年度に予定していた分化誘導実験を推進させ、上記研究推進計画に基づいて研究を推進する。すなわち1)変異型疾患原因遺伝子の発現ベクターを細胞に導入して酵素活性への影響を確認する。2)患者由来iPS細胞を用いてin vitro 疾患モデル系を構築し、発症・病態メカニズムの解析を行う。3)in vitro 疾患モデル系を用いて、新規薬物のスクリーニングや新規遺伝子治療法による効果の評価を行う。そのため繰越額は上記実験に関する試薬、材料等の消耗品購入にあて、平成26年度予算とともに研究に使用する。
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