研究実績の概要 |
本研究は、ゴーシェ病患者の口腔粘膜線維芽細胞(OFs)からiPS細胞を樹立し、疾患モデル細胞分化系を構築して、病態メカニズムの解明および新規治療法開発のための基礎研究を行い、再生医療における歯科の新たな役割を提示することを目的として開始した。 成果としては、平成24年度に患者由来OFsからiPS細胞株を樹立することに成功し,平成24~25年度にかけて、疾患モデル細胞分化系を樹立する前提として、原因遺伝子GBA1の変異同定を行った。その結果、mRNAおよびゲノムDNAを鋳型にしたdirect sequence解析により、タンパク質コード領域に2カ所、ヘテロ接合様式のSNPsを同定した。この結果は従来のゴーシェ病の定義と異なり、「異型ゴーシェ病」として、別の遺伝子変異が発症に関与している可能性が示唆された。さらに患者及び家族のGBA遺伝子配列を確認し、GCase活性を測定すると、遺伝子変異と酵素活性に相関が見られなかった。そこで最終年度(平成26年度)は、さらに全遺伝子のエクソーム解析結果について、GCase活性を指標に候補遺伝子変異を検討し、全体で同定した19,293個のSNPsから、現在絞り込みを進めている。今後、候補遺伝子変異同定のためのさらなる解析が必要である。 従って当初の計画とは異なるが、本研究による新事実の発見により、新規遺伝子変異の同定は、病態メカニズム解明や治療法の開発のシーズとなる可能性があり、目的に一致すると考える。また、本研究材料として使用したOFsの特性について、マイクロアレイにて、皮膚線維芽細胞およびOFs由来iPS細胞と、発現遺伝子プロファイルを網羅的に比較検討した結果、OFsが組織再生やリソソーム病研究に適した細胞である事を見出し、歯科領域の細胞を広く世界に発信した(Biomed Res Int., in press)。
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