研究課題
基盤研究(C)
骨代謝制御における新規分子PRIPの機能解析を通して未知の分子基盤を明らかにすることを目的として、今年度は「PRIPの有無が及ぼす個体への影響」と「PRIPの有無が及ぼす骨芽細胞、破骨細胞分化への影響」について解析を行った。野生型及びPRIPノックアウト(PRIP-KO)マウスにおいて、血中の骨代謝マーカーや関連ホルモン(アルカリホスファターゼ(ALP)、TRAP-b、オステオカルシン、オステオポンチンなど)の分泌量をELISA法で、またそれらの発現量をリアルタイムPCRで検討した。その結果は、これまでの解析結果(PRIP-KOマウスにおける海面骨の骨量、骨密度の増加、分化した骨芽細胞、破骨細胞の細胞数の増加、骨吸収活性の低下など)と相関していた。野生型、PRIP-KOマウスの頭蓋骨から調製した骨芽細胞前駆細胞を用いて、骨芽細胞分化に重要なBMPシグナリングについて、ALP活性やSmad、ERK等のシグナル分子の発現量やリン酸化程度などを経時的に追った。BMP刺激に応じたSmad分子のリン酸化上昇後、野生型由来の骨芽細胞では低下するのに対しKO由来ではそのリン酸化状態が持続した。また、大腿骨由来の骨髄細胞を用いて破骨細胞分化におけるPRIP有無の影響を検討した。RANKL刺激による分化誘導過程において、RANKL、M-CSFの受容体であるRANK及びCD115の発現がKO由来の細胞において減少しており、分化誘導後のTRAP染色ではTRAP活性を持った破骨細胞数がKO由来の細胞で少ない傾向にあることが分かった。これらの結果から事前の解析結果をふまえ、PRIP分子の欠損により、骨芽細胞分化が促進され、破骨細胞分化が抑制されることが分子レベルで示された。
2: おおむね順調に進展している
PRIP-KOマウスの表現型から類推した可能性について、今年度は分子レベルでの解析を行ったが、これまでのPRIP分子に関する研究の蓄積もあり、研究を進めるにあたり想定外の大きなずれが生じなかった。また、マウスの頭骸骨や骨髄から採取した細胞を用いた初代培養を行っているが、前骨芽細胞の初代培養細胞についてはPRIP-KOマウスが生まれにくいため生まれたときに可能な限りストックを作っておくことで対応し、前破骨細胞の初代培養細胞についてはストックが出来ないが今年度は野生型とPRIP-KOマウスの適切な週令のものを得ることが比較的順調であった。これらのことからおおよそ計画通り遂行することが出来た。
1.PRIPの有無が及ぼす骨芽細胞、破骨細胞分化への影響とそのメカニズム・ 骨芽細胞および破骨細胞において受容体などの膜分子(BMP受容体、RANK/RANKL等)の発現量や局在をligandbinding assayやFACS、免疫染色等で検討する。また、これらの細胞から分泌される特徴的な分子(RANKL、サ イトカイン等)の分泌量をELISAで測定する。細胞に刺激を与え、分泌速度の変化を計時的に追い、PRIPの有無 の影響をみる。影響がある場合、膜発現や開口分泌に関わる種々の分子とPRIPとの相互作用や分泌に至る過程の どこにPRIPが関わるかを生化学的手法にて解析する。2.細胞への変異体導入による解析・ PRIP遺伝子についてRNA干渉用のコンストラクトを作製し、PRIPの発現を抑制した骨芽細胞に分化可能な培養 細胞の変異株(ノックダウン細胞)を構築する。 構築したPRIPノックダウン細胞において、骨芽細胞への分化 能を確認し、Smadなど骨芽細胞への分化と機能に重要でかつPRIPの有無が影響する分子の変異体を遺伝子導入し 、PRIPの機能の詳細を検討する。・ 骨芽前駆細胞と破骨細胞前駆細胞の共存培養を行い、野生型およびPRIP-KOマウスそれぞれにおける骨芽細胞 の破骨細胞分化誘導へのポテンシャルや破骨細胞前駆細胞の分化能を生化学的手法にて検討する。カップリング に関わる分子群の発現や分泌にも着目して検討する。
・設備備品費:本研究において使用する機器・設備は、研究室所有或いは共有の備品として現有しているの で経費はかからない。・ 消耗品費:薬品類、培養用血清等の消耗品費に大部分の費用を割く。(培養細胞用培地 500円x10本、血清30,000円x1-2本、各種ホルモンアッセ イキット100,000円x4~6,市販の抗体 50,000円x3~5 他)・ 旅費:関連分野の国内外での学会参加および成果発表のための旅費を計上する。・ その他: 論文校閲費や資料送付費、動物飼育委託費は、従前の支出実績に基づいて計上する。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)
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http://www.mcb.dent.kyushu-u.ac.jp/index.html