研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は「タンパク質のリン酸化制御における PRIP の役割について、開口分泌調節をモデルとして解明する」ことである。平成24年度に下記の成果を得た。1.ホスファターゼの足場タンパク質としての役割PRIP は PP1、PP2A という異なるホスファターゼと結合する。種々の PRIP 変異体を用いた結合実験から、PP1 と PP2A は同一ではないものの PRIP 上の極近接した部位に相互排他的に結合することがわかった。また、PP2A の結合は PRIP のリン酸化等の影響を受けないものの、PRIP のリン酸化により PP1 の結合が減弱されるため、細胞内のように PP1 と PP2A が同時に存在すると PRIP のリン酸化に伴って PP1 と PP2A の交換が生じることを突き止め、報告した。2.リン酸化シグナルを介した開口分泌の制御PC12 細胞からのノルアドレナリン分泌を指標として、タンパク質キナーゼ PKA や PKC の活性化は開口分泌を促進することを示した。このとき、開口分泌に必須のタンパク質複合体 SNAREs を構成する SNAP-25のリン酸化レベルと開口分泌が正の相関関係にあった。リン酸化された SNAP-25 の脱リン酸化は PP2A や PP2B ではなく、PP1 が担っていること、PRIP は自身のリン酸化状態により、PP1 との結合量を調節しながら SNAP-25 の脱リン酸化過程を修飾し、開口分泌のリン酸化制御に関与することを報告した。これらの結果により、多酵素複合体による複雑なリン酸化シグナルの時空間的調節機構の理解が深まった。
1: 当初の計画以上に進展している
関連する論文2報を発表した。本研究の目的は「開口分泌を例として、タンパク質のリン酸化制御における PRIP の役割について解明する」であるが、PRIP が複数のタンパク質ホスファターゼを操る仕組み、ホスファターゼを開口分泌の場に動員し、開口分泌に必須のタンパク質複合体 SNAREs のリン酸化状態の調節を介して開口分泌制御機構を修飾することを明らかにしたため。
上述したように本研究課題は順調に推移している。今後も試験管内実験、細胞レベルの実験、PRIP 欠失マウスを用いた実験の各階層から得られた結果をお互いにフィードバックしながら計画を進める。PRIP とタンパク質キナーゼ Akt の結合のリン酸化シグナル調節における意義や、PRIP の細胞内局在の制御機構について PRIP と他の分子との相互作用を新規のものも含めて検討し、本研究の目的である「タンパク質のリン酸化制御における PRIP の役割解明」を目指す。
該当なし
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