研究課題
本研究の目的は「タンパク質のリン酸化制御における細胞内シグナルタンパク質 PRIP の役割について、主に開口分泌調節をモデルとして解明する」ことである。平成25年度は下記の結果・成果を得た。1. 前年度に PRIP がタンパク質ホスファターゼ PP1 を介して開口分泌に必須のタンパク質複合体 SNAREs のリン酸化レベルを調節して開口分泌の修飾に関わることを報告したが、PRIP の足場タンパク質としての機能が開口分泌に比較的特異的に作用する機序は不明であった。今回、PRIP の C 末端に存在する分子モジュール C2 ドメインが直接 SNARE 複合体と結合し、細胞内での共局在に寄与していることを明らかにした。N 末端の PIP2 結合を介した細胞膜への局在化と併せて PRIP が SNARE 分子の存在する膜融合の場に特異的に局在する機構が明らかとなり、PRIP の足場タンパク質としての機能の解明が進んだ。2. PRIP のオートファジー調節への関与が明らかとなり、PRIPを介した膜融合調節が開口分泌にとどまらない細胞内膜輸送系に及ぶことを示唆する結果を得て報告した。3. PRIP と Akt/PP1c/PP2Ac それぞれの組換えタンパク質の精製標品を用いた結合実験から、これら分子の試験管内における相互作用の関係を明らかとした。PRIP 欠損マウス由来の初代培養細胞(線維芽細胞、肝細胞など)の刺激に伴う Akt 活性化シグナルの時間経過との相関について解析を続けている。4. PRIP と結合するキナーゼ Akt の新たな基質として開口分泌に関わる SNARE 結合分子を見出し、同分子の SNARE 分子との結合がAkt によるリン酸化によって制御されることを突き止めた(一部学会発表、投稿準備中)。PRIP による開口分泌調節の新たな経路となる可能性が示唆される。
2: おおむね順調に進展している
関連する論文を3報発表した。これらの成果によって PRIP が開口分泌の場に局在する機構の詳細が明らかとなったため。
上述したように本研究は概ね順調に推移している。今後も引き続き試験管内実験、細胞レベルの実験の結果を互いにフィードバックさせながら計画を進める。PRIP と Akt / PP1c / PP2Acの相互作用の同時性や相互排除性等の関係に関して試験管レベルでの解析は進み学会でも成果を発表したが、それらの細胞内での挙動についてのデータはまだ少ない。次年度は特に細胞レベルでの解析を中心に進め、本研究の目的である「タンパク質のリン酸化制御における PRIP の役割解明」を目指す。
継続的に使用している細胞培養用の培地を購入するための費用だが、1本分のみ次年度使用額として残った。年度の変わり目の約2週間で使用する量に相当するものだが次年度も継続的に使用するもので、長期保存をさけるため購入を次年度早々に行うこととしたため。約2週間分の細胞培養用培地に相当し、次年度も継続的に購入が必要な培地を購入する。
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